2015年11月7日の第71回月例発表会(M1)において,陳 洵(M1),西野 剛史(M1),長田 剛典(M1),出村 友秀(M1),鬼木 明日香(M1),川上 智史(M1),石正 幸大(M1)の7名が以下のタイトルで発表を行いました.

V2Xセキュリティ通信についての研究(陳 洵)

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近年,自動運転を目指したITS(IntelligentTransportSys-tem)の研究が世界各地で行われている.V2X(VehicletoX)とは自動車(Vehicle)と,他の様々な機器やモノ(X)を通信で繋げることを指す.V2X通信では道路情報,歩行車情報,天候情報などの情報をリアルタイムに通信することで安全な運転することが可能となる.一方,すべての情報がインターネット経由で獲得するので,情報の信頼性を判別せず利用すると,事故が発生する恐れがある.従って,その信頼に対応するためのセキュリティ対策への注目も高まっている.しかし,セキュリティ機能を導入したシステムでは,送信処理時間はセキュリティなしと比較して最大50倍(10msec)、受信処理時間はセキュリティなしと比較して最大15倍(6.2msec)の処理時間がかかる.また,処理時間の約9割以上がセキュリティ処理となっている1).高速道路上走っている車同士の相対速度は250km/hに達することを考慮したら,送受信処理かかる時間を少なければ少ないほうがよい.本研究では,セキュリティを導入した際の処理時間を短縮するため,いくつかの方法を提案し,その性能を評価行う.

NoSQLを利用した複数視点による移動物体位置管理システムの提案(西野 剛史)

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近年,多くの公共空間に防犯カメラが設置され,日本国内では約300万台が稼働している1).防犯カメラの用途として,防犯はもちろんのこと,例えば,コンビニ・スーパーで人物追跡を行い,商品棚ごとの集客情報を解析するマーケティングにも利用され,防犯だけでなく生産性のあるデバイスとして,認知されつつある.しかし,図1のように,管理者ごとに,カメラ仕様や取得データの保存形式が異なっており,また,管理者は自身の監視エリア内のみの追跡しか行うことができず,防犯カメラが広範囲で無数に設置されていたとしても,これらの管理者が異なっていると,管理者の境界ごとに追跡対象を見失ってしまう.本研究では,スキーマレス・スケーラビリティに特化しているNoSQLを利用して,物体追跡を行う複数カメラから得られた位置情報を統合・一元管理させ,また,統合におけるカメラ台数増加に伴うデータ量の増加と,管理者ごとの不均一なデータ形式やカメラ台数・性能に柔軟に対応できるシステムを提案することによって,追跡範囲の拡大による一貫した物体追跡を目的とする.

スマートグラスを用いた仮想空間への手書き情報共有システム(長田 剛典)

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近年,AR(AugmentedReality)の研究が進められている.視覚的に情報を追加するという特徴から,広告やユーザ間の情報共有といった用途が挙げられる.全てのユーザで共有出来る仮想空間によって,見知らぬ人とのコミュニケーション支援となり得る.しかし,ユーザが自由に3次元空間へ情報を追加することは研究段階である.また現在,ウェアラブルデバイスの研究が進められている.中でも透過型スマートグラスは,身に着けるだけで視界に仮想空間を重ねることが出来る.モバイルデバイスでは,ARオブジェクトを表示するために,表示したい場所に向けて,モバイルデバイスをかざす必要があり,手が塞がるため操作の自由度が低下する.スマートグラスではその問題点を解決し,直感的な操作が可能となる.そこで本研究では,スマートグラスを用いた仮想空間への手書き情報共有システムを提案し,実装と評価を行う.

ドライバーの認知状況を考慮した警告システムへの適応検討(出村 友秀)

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ITSにおけるさまざまな安全運転支援システムが普及してきている1).この中のシステムの1つとして警告型安全運転支援システムが挙げられる.警告型安全運転支援システムとは,周辺他車の走行情報を取得することで自車周辺の危険情報を判断し,ドライバーに対して警告を行うことで他の車や歩行者との交通事故を削減するという目的で開発されたシステムである.警告型安全運転支援システムイメージ図を図1に示す2).また,ドライバーの運転行動は認知・判断・操作の繰り返しから成っており,ドライバーが他の車や歩行者を見落としたり,発見が遅れたときに多発している.つまり,「認知」の段階でのドライバーのミスが原因となっているということである.また,「認知」とは,約90%が視線からの情報を基に行っており,「認知」の段階においては視線情報を考慮することが必須といえる.本研究では,ドライバーの視線情報により認知状況を把握し,警告型安全運転支援システムの効果を高めるためにドライバーの認知状況を考慮した警告型安全運転支援システムへの適応を検討する.

組込みシステムの物理的状態に基づく機能制限の検討(鬼木 明日香)

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近年高性能なメモリやCPUが安価で手に入るようになったため,家電や製造ロボット,交通システムなどの組込みシステムへ通信機能を搭載することが検討されている1).情報技術が社会基盤化すると産業のさらなる効率化が期待される一方,セキュリティに関する問題の深刻化が懸念されている.マルウェアや管理者の悪用,詐欺といったサイバー犯罪への対策が不十分な状態で組込みシステムに通信機能を搭載すると,システム暴走による火事や交通事故などの人命に関わる被害が発生する.本研究では通信機能を持つ組み込みシステムの仕様範囲外動作を防止する機能制限の方法を検討し,社会で実用可能なセキュリティが保証された通信機能搭載組込みシステムの実現を目指す.

携帯回線を利用した電子署名による車々間通信手法の検討(川上 智史)

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近年,知的交通システム(ITS:IntelligentTransportSys-tems)の研究が活発化している.その一つとして,自動車の安全性や運転者の快適性向上を目的としたアプリケーションが登場している.アプリケーションにおいて必要なデータは,アプリケーションの多様化,高性能化により更に膨大になる.しかし,センサデータ等,車両1台で収集可能な情報は限られているため,車々間通信を用いて他車両が取得した情報を共有することで,各アプリケーションに利用できる.車々間通信を行う際に,悪意のあるデータが伝送されたり,途中でデータが改ざんされたりすると,大きな事故につながる可能性がある.そのため,発信元の真正性やデータの完全性を確認する仕組みが必要となる.また,欧州では,車両緊急通報システムであるeCall1)などの携帯回線を用いた通報システムの搭載の義務化が決定した.日本国内においても,富士通テンなどの企業を中心に試験運用が実施され2),車両への携帯回線の搭載が進められている.本研究は,車々間通信と携帯回線を併用し,携帯回線を用いて鍵交換を行うことで,真正性や完全性を保障する通信手法を提案する.

単眼カメラを用いた屋内通路における飛行方向制御の提案と実装(石正 幸大)

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近年,PCやカメラの普及に伴う小型化,性能向上が急速に進行し,コンピュータによるパターン・画像認識技術が,様々な領域で実用化できる状況が整ってきた.一方,空中映像撮影として用いられるドローンの分野において,前述の技術を取り入れて自律飛行の研究が盛んに行われている.ドローンは遠隔操縦,または自律式のマルチコプターのことを指し,産業・軍事用途などの様々な分野において将来使用されることが予想されている.多種多様な形状のものが開発されているが,特にドローンの小型化・高性能化の研究開発が活発に進んでいる.しかし,ドローンの自律飛行を実用化するためには,限られた計算資源や積載量などの物理的な問題点を解決する必要があり,今後ドローンの小型化と自律飛行を両立させるためには,さらなる研究実験が求められる.本研究では,小型のドローンのような特に限られた積載量の制限下において,レーダなどのセンサを用いることなく自律飛行を可能とするために,単眼カメラから撮影された画像から,屋内通路における飛行方向制御を提案する.