2017年2月1,2日の2016年度修士論文試問会において,鬼木 明日香(M2),西野 剛史(M2),長田 剛典(M2),川上 智史(M2),陳 洵(M2),出村 友秀(M2),石正 幸大(M2)の7名が以下のタイトルで発表を行いました.

組込みシステムの状態を考慮したダイナミックファイアウォール(鬼木 明日香)

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近年,インターネット接続機能が搭載された組込みシステムが注目されている.将来はロボットや自動車を含め,日常のあらゆる機器がインターネットに接続されると予想され,遠隔地から通信によって命令を送ることで機器を操作すること(以下,遠隔操作と呼ぶ)の活用による多様なサービスの登場が期待されている.しかし,機器の乗っ取りやマルウェア感染,さらにDDoS攻撃への悪用などの様々な脅威と,それらに起因して発生する被害の事例が発表されており,社会の受容性が低いことが問題となっている.この現状に伴い,組込みシステム向けのアクセス制御手法の研究も活発に行われるようになってきたが,操作されるシステムの周囲にいる第三者の安全やプライバシーを考慮したアクセス制御手法は確立していない.そこで本研究では,遠隔操作中に操作ユーザとの通信が急に切断された場合の対応策および,認証ユーザの操作ミスや悪意のある操作への防止策を施すことによって,組込みシステム所有者の被害だけでなく,周囲の第三者の被害を防止可能なファイアウォールを検討する.

複数視点人物追跡のための色相紐付け手法によるNoSQL位置管理システムの提案(西野 剛史)

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近年,多くの公共空間に防犯カメラが設置され,日本国内では約300万台が稼働している.防犯カメラの用途として,防犯はもちろんのこと,例えば,コンビニ・スーパーで人物追跡を行い,商品棚ごとの集客情報を解析するマーケティングにも利用され,防犯用途だけでない生産性のあるデバイスとして,認知されつつある.人物追跡における主な処理として,検出,紐付け,位置管理が挙げられる.検出とは画像中に映っている人物の領域を特定することであり,紐付けとは,検出された人物をさまざまな特徴量をもとに区別し,異なる空間や時系列の同一人物に対応付けることである.しかし,一般的な防犯カメラは単眼であり,視野は限られているため,広範囲な追跡が不可能である.そのため,広域な人物追跡には複数のカメラを協調させる手法が一般的である.また,防犯カメラは,画質やサイズなどの仕様が多種多様であるため,検出が容易で,紐付けの要素となる特徴量を共有できるシステム設計が必要である

スマートグラスを用いた仮想空間への手書き情報描画システム(長田 剛典)

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近年,AR(AugmentedReality)の研究開発が進められている.ARは視覚的に情報を追加するという特徴から,ARによって作られた仮想空間上で広告やユーザ間の情報共有をするといった用途が挙げられる.全てのユーザで共有出来る仮想空間によって,見知らぬ人とのコミュニケーション支援となり得る.また,ウェアラブルデバイスが登場し,中でもGoogleGlassをはじめとする透過型スマートグラスは,身に着けるだけで視界に仮想空間を重ねることが出来るため,ハンズフリーであり,また直感的な操作が可能となる.AR技術によって仮想空間に文字や図といった情報を追加する方法として,スマートグラスではモバイルデバイスを含めた他の機器を利用して行われている.そのため,スマートグラスのハンズフリーである利点を失ってしまう.ユーザが手書きのような自由な軌跡で3次元空間へと情報を追加することはまだ研究段階である.本研究では,スマートグラスを用いた仮想空間への手書き情報描画システムを提案し,評価を行う.

車々間通信における効率的電子署名方式(川上 智史)

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近年,高度道路交通システム(ITS:IntelligentTransportSystems)の研究が活発化している.その一つとして,自動車の安全性や運転者の快適性向上を目的としたアプリケーションが登場している.アプリケーションにおいて必要なデータは,アプリケーションの多様化,高性能化により更に膨大になる.しかし,センサデータ等,車両1台で収集可能な情報は限られているため,車々間通信を用いて他車両が取得した情報を共有することで,各アプリケーションに利用できる.車々間通信を行う際に,悪意のあるデータが伝送されたり,途中でデータが改ざんされたりすると,大きな事故につながる可能性がある.そのため,発信元の真正性やデータの完全性を確認する仕組みが必要となる.また,車両には,前方にある障害物を検知するためのセンサの搭載が進んでいる.センサを用いることによって,前方を走行する車両の位置情報を取得することができる.本研究は,車々間通信により受信した車両走行情報と,センサにより取得した前方車両の位置情報を併用し,電子署名の検証を行う通信方式を提案する

情報の信頼度に基づいた効率的車々間通信ルーティングプロトコル(陳 洵)

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近年,自動運転を目指したITS(IntelligentTransportSys-tem)の研究が世界各地で相次行っている.ITS分野において,無線通信技術を利用して周辺環境状況の把握を行うVANET(VehicularAd-hocNetwork)が注目されている.VANETは特殊なAd-hocNetworkであり,無線LAN(Wi-Fi)のようなアクセスポイントを必要としない,無線で接続できるノードのみで構成された自律分散型無線ネットワークである.VANETでは,車両が高速で移動するときには構成されたネットワークのトポロジーが多種多様に変化するので,通信の安定性も重要である.また,通信情報の信頼性をチェックしないため,情報を受信のみ行って転送しない悪意車両が混入していたら,通信効率が低下する.そこで,多変なトポロジーに耐えられる且つ情報の信頼性をチェックするルーティングプロトコルが必要となる.本研究では,セキュリティ機能を導入せずに,現有のAODV(AdhocOn-demandDistanceVectorRouting)プロトコルとDSR(DynamicSourceRouting)プロトコルを基づいて改良し,さらに各ノード(車両)の通信履歴による信頼値を導入した効率的車々間通信ルーティングプロトコルを提案し,パケットロス率と通信遅延の削減を目的とし,安定的な通信環境を構築することを目指す.

車両走行環境を考慮した協調型運転支援システムにおける警報タイミングの提案(出村 友秀)

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近年,さまざまな種類の自律型運転支援システムが開発されておりすでに実用化されている.その中の衝突回避支援システムは,ドライバに対して警報を行うことや自動ブレーキのような制御を行うことでドライバの安全運転を支援する.このシステムは,車両に搭載された車載センサを利用し,車両や歩行者のような対象物との距離や相対速度をセンシングすることで実現される.ただし,警報や制御などの運転支援は,ドライバが運転する環境を考慮せず,あらかじめ決められた固定型設定となっており,車両の衝突を防止できない可能性やドライバに煩わしさを与える可能性がある.そこで,新たに適応型設定が検討されており,ドライバ個人の好みに合わせた手動設定や運転者特性やドライバが運転する環境を加味した設定が考えられている.また,高度道路交通システム(ITS:IntelligentTransportSystems)の研究が盛んに行われており,車々間通信や歩車間通信の技術的発展によって,周辺車両や周辺歩行者との情報共有が可能となり,それらの情報も利用した運転支援システムとして,協調型運転支援システムが期待されている.このようなシステムは,車載センサによるセンシングのみでは得られない情報も加味した運転支援が可能となり,例えば,見通しの悪い交差点から飛び出してくる車両や歩行者など,死角となる位置にある対象物の情報も得られるようになり,その情報を利用した運転支援が行えるようになる.

単眼カメラを用いた屋内環境における小型無人機のための消失点推定(石正 幸大)

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本研究では,MAVの安全面の問題に対して,単眼カメラによる画像のみを用いて屋内通路の進行方向の導出を行う手法を提案する.進行方向の導出には,消失点推定技術を用いる.単眼カメラによる画像から,屋内通路の壁と天井,壁と床のエッジを抽出し,その抽出データから消失点を推定することで屋内通路の続く方向を導出する.屋内通路の進行方向をカメラ画像から自律的に推定することで,屋内環境におけるMAVの安全飛行の実現を目的とする.