2017年10月14日の第91回月例発表会(M1)において,杉坂 竜亮(M1),東峻太朗(M1),阪田 大輔(M1),木下 浩希(M1),長谷 錦(M1)の5名が以下のタイトルで発表を行いました.

道路情報と車両情報を考慮したダイナミックマップの効率的更新手法(杉坂 竜亮)

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近年,高度道路交通システム(ITS:IntelligentTransportSystemys)の研究開発が活発に行われ,道路交通の安全性や快適性は日々進歩している.高機能化の進んだ自動車にはカメラやセンサーなどが搭載されつつあり,現在ではGPSによる自車両の現在位置の把握だけでなく,周辺環境を認識しながら走行することが可能となっている.またこれらの技術を利用し,各車両がセンシングによって得た位置や速度などの動的な情報をLTEネットワークを通じてクラウドへと送信し1),道路や建物など静的な地図情報上に重ね合わせてダイナミックマップを構築する研究も進められており,今後発展していくと考えられる自動運転において重要な役割を果たすと期待されている2).自動運転以外にもダイナミックマップを利用することによって,車両が単体で行うセンシングでは得ることのできないより広範囲の車両走行情報と周辺環境情報を得ることで,高度な安全運転支援や渋滞緩和などを目的とした走行制御が可能となる3).ダイナミックマップを用いることで新たな運転支援が可能となる一方で,ITS車載器が搭載された車両の増加や高度なサービスの登場によるLTEの通信トラフィックの増加が問題となる4).そこで本研究では,走行している車両の情報や周辺の道路情報に応じてクラウドと通信を行う周期を変化させ,車両とクラウド間の通信トラフィック増加に伴う負荷を低減させるために適切な設定を検証する.

車両位置相互監視によるV2X通信なりすまし検知手法(東峻太朗)

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V2V通信の発展により,衝突防止支援や追従走行支援といった安全運転支援が実現している.さらに近年では,路車間や歩車間通信の他に,携帯回線を用いたクラウドとの通信も可能となり,これらを総じてV2X通信と呼ぶ.クラウドを介し,V2V通信可能範囲外の車両と通信可能である他,V2V通信によって得た情報をクラウドに送信することで,自車両の周辺情報をクラウド上で他車両と共有することも可能である.しかし,不適切な情報がクラウドに与える影響を考慮する必要がある.自身の車両情報を偽ることで,クラウドを利用したシステムを攻撃することができ,故意に渋滞や事故を誘発することが可能である.本研究では,V2X通信を行い車両の周辺情報を利用することで,クラウドに集約されるデータから,不正データを検知する手法を提案する.クラウドへの送信データに対し,考え得る脅威や求められる要件を分析し,本研究が取り組むべき問題を明らかにした上で,提案手法の実装による評価を算出する.その結果,不正データを93%検出することができ,さらに車密度を考慮し提案手法の閾値を増加させることで,検知率を100%にすることが可能となった.周辺環境に応じてデータの信頼性を保証する効果が高まることを示した他,提案手法のフォールスホジティブや実行処理時間を示し,提案手法が現実的であるかどうかの評価結果も算出した.

オンラインゲームにおける移動情報を考慮したフレーム予測によるラグ改善手法(阪田 大輔)

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近年,テレビゲームや携帯ゲーム,スマートフォンアプリなど様々なハードウェアでゲームが遊べるようになっている.さらに,ネットワークを介して世界中のプレイヤーとゲームを遊ぶことができる様々なオンラインゲームが開発されている.オンラインゲームはMMORPG(MassivelyMultiplayerOnlineRolePlayingGame)やFPS(FirstPersonShooter)ゲームなど,様々な種類が存在する.FPSゲームは,非同期型/サーバー集中処理型のオンラインゲームであり1),サーバーからクライントに,ゲーム世界のスナップショットを送信し,それを受けてクライアントからコマンドを送信し,サーバーで当たり判定やダメージ計算などの処理を行う.しかし,オンラインゲームはネットワークを通じて情報通信を行うために,通信遅延やパケットロスにより,自分と相手が見ているゲーム世界に時間差が生じてしまい,ゲームの整合性を取ることが難しくなる.特に,FPSゲームやTPS(ThirdPersonShooter)ゲームは,図2のように,本来のプレイヤー位置と他視点からのプレイヤー位置が異なると攻撃の当たり判定が難しくなるため,他の種類のゲームと比べて低遅延が要求される2).そこで本提案手法では,クライアントからサーバーに,プレイヤーの移動ベクトルを移動情報として送信し,サーバー上で移動情報から未来のプレイヤー位置を算出して,そのスナップショットをクライアントに送信することで,ラグの改善を図る.

ニューラルネットワークにおける汎化性能に関する考察(木下 浩希)

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近年,画像認識や音声認識などの分野でディープニューラルネットワーク(DNN)が高い性能を出している.DNNの仕組みは古くからあったが,データ数の増加,GPUの使用,Dropoutなどの正則化によって高い性能が出せる事が分かってきた.画像認識のベンチマークでは,年々より深い構造のネットワークが提案され既存の構造を上回る精度を出している.しかしDNNの理論的な理解は十分にはされておらず,様々な観点からDNNの性能の高さを説明する研究が行われている.例えば,DNNの最適化が上手くいく理由を説明するものや1),DNNが表現できる境界の複雑さに関するものがある2).また,ZhangらによってDNNの汎化性能に関する研究も行われている3).Zhangらは正解ラベルをランダムに張り替えた学習データでもDNNは学習することができ,学習データ自体をガウス分布にしても同様に学習できる事を示した.これはDNNが学習データを記憶するのに十分なパラメータを持っていることを示している.統計的学習理論によるとモデルが多数のパラメータを持っている場合,汎化性能を上げるために何らかの正則化が必要である.ZhangらはDNNが汎化性能を持つための正則化に関して十分な理論がない事を指摘しており,確率的勾配降下法(SGD)がその役割を果たしているのではないかと予想している.そこで本研究では,DNNの活性化関数がパラメータ数が増えるにつれ発火しなくなることを示し,DNNの正則化との関係について考察する.

SRによる仮想現実への没入感向上を利用した追体験の評価と比較(長谷 錦)

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近年,拡張現実(AugmentedReality:AR)や仮想現実(VirtualReality:VR)といった技術が発展し広く普及している.スマートグラスやヘッドマウントディスプレイを装着することで,現実に情報を付加し利用者の行動や作業の補助を行ったり,人工的な環境の中に身を置き現実では不可能な体験ができるようになった.これらの技術が応用される範囲は広く,ゲームなどの娯楽から医療現場,学校教育や心理実験などにも使われている.本研究では,現在見えている映像に事前に撮影した過去の映像を重ねることで,過去に起きた出来事を現在進行形で起こっているように見せることが出来る技術である,代替現実(SubstitutionalReality:SR)技術を用いて,現実の代替・延長としての仮想現実を現実であると利用者に錯覚させ,高い没入感の中で映像の追体験をさせることで学習効率の向上を図る.