2019年7月13日の第109回月例発表会(M2)において,横田 雅樹(M2),西牧 佑哉(M2),井上 綺泉(M2),西村 閣晋(M2),中谷 要太(M2),木村 健太(M2),英 翔子(M2)の7名が以下のタイトルで発表を行いました.

車両走行時の情報を用いたドライバーの認識状態の推定(横田 雅樹)

近年,交通インフラを支える仕組みとして,安全性向上や利便性向上などを目的とした知的交通システム(ITS)の研究が進められている.それに伴い,様々なITSを用いた安全運転支援システムの研究も進められている.一方で,日本における交通事故にて,2016年度は年間3904人が亡くなっている.その中でも,移動状態別の分類では,歩行者の死者が1361人とトップとなっている1).つまり,特に都市の車両と歩行者が共存する道路や見通しの悪い道路においては,安全運転支援システムによって対歩行者交通事故を防止する必要がある。ほとんどの対歩行者交通事故は,人為的なミス,特にドライバーの知覚ミスや認識ミスに起因する.そのため,安全運転支援システムはドライバーよりも高度に歩行者の位置情報を認識する.そして,認識した情報をドライバーに提供することによって人為的なミスを防止する.しかしながら,現在の安全運転支援システムはドライバーの認識状態を考慮していない.ドライバーの認識状態を推定することができれば,それに応じてそして,効果的な情報提供の手法を検討することが可能となる.本研究では,ドライバーが車両を運転しているときに,道路を横切っている歩行者の認識状態の推定を行う.歩行者の認識状態とは「ドライバーが衝突する可能性のある歩行者を認識しているかどうか」を指す.ドライビングシミュレーションにより取得したデータを用いて,OCSVMを用いた推定を行い,効果やその応用について検討を行う.

移動体の電波強度を利用した歩行者の位置精度向上手法(西牧 佑哉)

近年,スマートフォンやタブレット端末の普及率の増加に伴い,それらの位置情報を用いた様々なサービスが利用されている.また近年,車車間通信や歩車間通信など,自動車の安全性や運転の快適性の向上を目的とした知的交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)の研究が盛んに行われている.ここで,歩車間通信によって交通事故を減らすことを考えた場合,お互いの正確な位置情報が必要となる.位置情報を取得する手法として位置測位システムがあり,その中で最もよく利用されているのがGPS (Global Positioning System)である.しかし,GPSの位置精度は数mから数十mであり,都市部では,GPS信号が建物による遮断やマルチパスの影響を受けて,位置誤差がさらに増大するという問題がある.そこで本研究では,ITSの発展によって今後,車車間通信や歩車間通信が普及していくことを踏まえ,ビーコン及び車両の電波強度を利用して,屋外の歩行者の位置精度を向上させる手法を提案する.

エッジコンピューティングを利用した分散システムによるAR高速化手法(井上 綺泉)

IoT(Internet of Things)によりインターネットに繋がるモノが急増し,現在の多くのアプリケーションは集中型処理であるクラウドコンピューティングが使用されている.また,アプリケーションには,近年研究が盛んに行われているAR(Augmented Reality)が挙げられる.ARは医療現場や建設現場での遠隔操作や目的地を案内するためのナビゲーションなど様々なシステムがある.しかし,ARはカメラ画像と仮想情報の画像データを扱うことになるため,集中型処理のクラウドでは膨大なデバイス数からアクセスがきたり大容量のデータが収集されると,サーバへの負荷が増大する.また,これによってサーバ処理性能が圧迫されるため,システムの応答時間も大きくなる.そこで本研究では,エッジコンピューティング利用して,処理を分散させることでARを高速に表示するシステムを提案する.これによって,サーバへの負荷を分散してトラフィック及びシステムの応答時間の削減を図る.

帯域幅比率に応じた負荷分散による複数経路伝送手法の提案(西村 閣晋)

インターネットを利用したアプリケーションの普及により,ネットワーク上のトラフィック量は年々増加しており,今後も増加していくことが予想されている.中でも動画共有サイトにおいて増加,高品質化しているインターネットビデオのTCPトラフィックはその大きな要因となっている.そのため膨大な量のTCPトラフィックがある状況下でもアプリケーションが利用できるようネットワークの輻輳を抑制する仕組みが必要となっている.対策として挙げられるのがルーティングプロトコルの改善である.RIP(Routing Information Protocol)やOSPF(Open ShortestPath First)といった既存のルーティングプロトコルは,単一経路制御である.単一経路制御とは,経路の合計コストが最小となる単一の通信路を用いたルーティング手法である.しかし,これらルーティングプロトコルには最適経路である単一経路上のリンクやノードにトラフィックが集中し,輻輳のリスクが高まってしまうといった欠点がある.この問題に対する解決策として,最適経路以外の宛先ノードに通じる冗長経路を活用し,複数の経路を伝送に使用する複数経路制御を用いることが考えられる.これによりネットワーク全体の使用率向上を見込め,輻輳の抑制が期待できる.

ドローン操縦のための周辺環境に基づいたポリシー生成手法(中谷 要太)

近年,無人航空機及びUnmanned Aerial Vehicle(以下,UAV)の研究が盛んに行われている.UAVは,すでにダムや橋の点検作業や地形調査などの産業分野で実用化されている[1].今後は,工場の巡回警備などの屋内環境においての利用が予想される.しかし,UAVに関わる問題として物体との衝突などが挙げられる.また屋内環境での利用が今後増加すれば,衝突事故等は増えると予想される.UAVの墜落・衝突事故の大きな原因は操縦者の判断ミスや操縦ミスである. 現在普及しているUAVの大半は,操縦をサポートする機能は搭載されておらず,操縦者の技術に依存している.このような背景から,本研究は屋内環境でのドローン操縦における操縦者の判断ミス,操縦ミスによる事故の軽減を目指し,ドローンが飛行する環境地図とユーザーの思考を基に最適な制御(ポリシー)を動的に行うシステムを構築する.

時空間グリッドに基づく車両走行調停の検討(木村 健太)

近年,自動運転車両に関する要素技術の研究開発が盛んに行われている.自動運転車両は周囲の環境をリアルタイムに把握し,状況に応じたパスプランニングを選択する必要がある.周囲の環境を取得するためにセンシングを行うことが主流だが,それに加え車両間で持ちうる情報を共有することによって,より正確な周囲の環境を取得する手法が研究されている.複数の車両間で情報を共有する仕組みの一つとしてダイナミックマップの研究が進められている.ダイナミックマップはリアルタイムな車両情報や交通情報を情報の更新頻度によって階層化して管理するシステムである.これにより,実世界の変化に対応した動的な地図を取得可能となり,高精度に周辺環境を認知することが可能となる.これらの技術を組み合わせることで全ての車両がいつ,どこからどこに行きたいのかを管理することが可能である.この情報を管理・利用することで車両が円滑に走行できるように調停するシステムを開発することや,特定地点の混雑する時間やあまり使われていない道路を分析し,道路開発に役立てることができる.本研究では,ダイナミックマップを利用した時空間グリッドに基づく車両走行調停システムを検討し,性能を評価する.

ダイナミックマップを利用したARによる交差点死角情報の可視化手法(英 翔子)

近年,道路交通が抱える問題を解決するため,ITSの研究が活発に行われている.中でも,車車間通信が注目されている.車車間通信は,複数の車両同士が通信を行い,情報を共有することで,交通の安全を高める技術である.複数の車両が情報を共有するための技術としてダイナミックマップがある.ダイナミックマップとは,建物などの静的な情報だけでなく,歩行者や車両などの動的な情報を組み込んだ地図情報のことである.ダイナミックマップは今後研究開発が活発になると考えられている自動運転技術において重要な役割を果たすと注目されている.ダイナミックマップを活用することによって事故の被害軽減や渋滞の緩和などの恩恵をもたらす研究が行われている.本研究では,ダイナミックマップとARを用いて,交差点の死角にいる車両や歩行者を可視化し,交通事故を減少させることを目的としたシステムを提案する.