2019年8月29日の第107回月例発表会(B4)において,中田 輝(B4),東山 絋樹(B4),細野 航平(B4),伊東 光一(B4),慶田 功一(B4),前田 綺咲(B4), 上原 夏紀(B4),中井 綾一(B4),平川 貴隆(B4),奥西 理貴(B4),林 聡一郎(B4),田中 佳輝(B4)の12名が以下のタイトルで発表を行いました.

仮想通貨を利用したダイナミックマップ時空間グリット売買による車両優先走行モデルの検討(中田 輝)

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近年,高度道路交通システム(ITS: Intelligent TransportSystems)の分野において研究が進められており,道路交通の安全性や快適性は日々進歩している.カメラやセンサーなどの搭載された自動車では,周辺の環境を認識して走行することを可能にし,従来のGPSによる位置情報の把握という通信手法と比較しても,より多くの情報を得ることで安全性や快適性を高めている.またこれらの技術を利用し,各車両が得た車両周辺の動的な情報をクラウドへと送信し,道路や建物など静的な地図情報上に重ね合わせることでダイナミックマップを構築する研究も進められており,自動運転において重要な役割を果たすと期待されている.このダイナミックマップを利用することによって,自動運転車がこれから走行をする経路の時間と空間を事前に予約し,他の車両を排除することで,よりスムーズな走行を可能にするという時空間グリッド予約システムの研究が進められている.しかし,この予約システムでは,経路の予約が早い者勝ちのため,混雑する時間帯には予約をできる可能性が低いといった問題が挙げられる.そこで本研究では,仮想通貨を利用した値段付きダイナミックマップ時空間グリッドによる車両優先走行モデルを検討する.

コネクテッドカーと非対応車両の混在状況における交差点通過時の安全性・効率の検討(東山 絋樹)

範囲外となる死角や遠距離の情報を入手できるコネクテッドカーが研究されている.自動運転技術と通信を組み合わせたコネクテッドカーにより,安全で効率的な交通を実現できることが期待されている.しかしながら,今後コネクテッドカーが発売されたとしても,普及するまでのしばらくの期間は通信機能を有しない非対応車両も一緒に走行している状況は避けられないことが想定される.こういった状況では,非対応車両の存在も考慮する必要がありコネクテッドカー同士の情報だけでは不十分である.そこで本研究では,コネクテッドカーと非対応車両が混在する交差点において,非優先道路側を走行するコネクテッドカーが通信を用いて交差点を通過する手法を提案し,シミュレーションによって安全性と効率を検討する.

エッジコンピューティングにおける協調型自動運転車とダイナミックマップとの通信手法に関する評価検討(細野 航平)

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近年の交通分野では,自動走行システムの研究・開発が加速しており,道路地図の高度化も必要となっている.高精度の道路地図上に,交通データ(動的情報,準動的情報,準静的情報)を重ねて,位置参照方式を用いてお互いに紐付け合うようにしたデータ集合は「ダイナミックマップ」と呼ばれ,自動走行システム等の高度な交通サービスを支えるための必要な情報基盤と位置づけられている.名古屋大学 大学院情報学研究科 附属組込みシステム研究センターの「ダイナミックマップ2.0コンソーシアム[1](以下「DM2.0」と略)」ではクラウド,エッジ,組込みをカバーする,ダイナミックマップのソフトウェアプラットフォームに関する研究開発を行っている.ダイナミックマップが扱うデータは非常に膨大で,これらを低遅延でやり取りする必要がある.これらの要件を満たすために,クラウドによる一極集中管理ではなく,クラウドと車両の間にエッジを挟んだ三層構造のネットワーク,すなわちエッジコンピューティングによってネットワーク負荷を軽減し,リアルタイム性の向上を目指している.そこで本研究では,DM2.0で使われている通信アーキテクチャ「ACCEAN」[2]を用いてエッジと,エッジ間連携の機能について評価する.

ネットワーク仮想化を利用した階層型データの効率的配信手法の提案(伊東 光一)

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近年,自動車は自動運転化が進み,車車間通信で周りの自動車と情報を共有する機会が増えていくと考えられる.ダイナミックマップを構成するためには低遅延かつ信頼性の高い通信システムが必要となる.ダイナミックマップにおける動的データから静的データまでの4階層に分けられたデータ[1]や,動画像データは階層型データに分類され,それぞれの層で重要性やデータ構造が異なる.本研究では,モビリティデバイスに向けて,ネットワーク仮想化を利用して階層型データを効率的に配信する手法を提案する.

色情報と文字情報を用いた看板認識手法の提案(慶田 功一)

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JJNTO(日本政府観光局)によると,日本は外国人訪問者数が世界で12位,アジアでは中国,トルコ,タイに続き第4位であると発表された.また,観光庁が2018年に行ったアンケートでは,外国人観光客が訪日旅行の際に困ったことの第4位であった「多言語表示が少ない,わかりづらいこと」が問題として明らかになった.飲食店で,看板が識別できないと提供される料理やグルメサイトの評価などを知ることができない.しかし,看板の識別さえできれば店舗情報を手に入れることは容易である.したがって,本研究では看板にある文字情報と色情報から画像認識を使って看板の識別を行い,既存手法と比較してその有用性を確かめる.

ID・パスワード不要システムの提案(前田 綺咲)

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我々はスマートフォンのログイン時やWebサービスを利用する.ログインの際,ID・パスワードが求められるが,一つ一つの入力は非常に面倒である.一方で顔認証が普及しスムーズな認証が可能になっているが,情報が漏洩した際のプライバシー面が問題となっている.今後はIoTなどが普及しビッグデータ化が進み[1],情報サービスを利用する人の個人認証機会が増える時代を迎えると考えられるため,顔認証や文字パスワードとは別の,人が意識していない間に個人認証を行い情報サービスにアクセスする手法が望まれる.そこで,本研究ではプライバシーを守りつつも自動的に取得した情報から個人を識別するID・パスワード不要システムを提供し,実現性や課題について考察・研究を進めていく.

非GPS環境におけるドローンの衝突回避(上原 夏紀)

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近年,小型無人航空機(ドローン)は玩具用から産業用へと応用分野を拡大し,災害救助や物資輸送,点検業務など様々な目的で利活用されており,今後も大きな発展が見込まれる.しかしながら,ドローンの応用分野が広がるにつれ,従来から飛行制御に用いられるセンサ,特に位置情報の取得に用いられるGPS(Global Positioning System)の問題が取り沙汰されるようになった.GPSは屋外環境においては一定の精度で測位が可能になる一方,屋内環境では測位精度が著しく低下する.よって現在,非GPS環境においてGPSの代替となるセンサを用いたドローンの自律飛行に関する研究が盛んに行われている.このような背景から,本研究は超広帯域無線通信方式(UWB:Ultra Wide Band)を用いることで,自己位置を測定し,それをもとにドローンが障害物を回避するシステムを構築する.

V2X通信における車両走行履歴のブロックチェーン化による位置情報偽装検知モデルの提案(中井 綾一)

近年,自動運転やV2X(Vehicle to Everything)通信の研究が盛んに行われている.V2X通信は,様々な方式で利用されており,車両の位置情報や周辺情報のリアルタイム処理を可能とする.しかし,現在V2X通信においてサイバーセキュリティに関する懸念がある.自動運転の場合,V2X通信に従って,自動車が運転判断を行うことから,攻撃者が誤作動を起こさせたい場合には,V2X通信を使った偽装行為は極めて有効である.例えば,遠隔で車両を操作し,誤った位置情報を送信したとすると,交通渋滞などを引き起こすことができる.このように,車両の偽装行為は解決するべき問題となる.また,最近では車両の走行履歴をクラウドで管理するアプリケーションが増えてきている.V2X通信でもクラウドと併用した通信が考案されている[1]ので今後も,このアプリケーションの利用が増加すると予想される.しかし,クラウドを利用したサービスでは,クラッキングやサーバがダウンした際の損害が大きいことが課題である.本研究では,車両の偽装行為の中で位置情報の偽装に着目する.そして,暗号通貨であるビットコインなどに用いられているブロックチェーンを参考にし,位置情報の偽装の検知および車両の走行履歴を保護する手法を提案する.ブロックチェーンはP2P型のネットワークアーキテクチャである.また,メリットとして,情報の分散に長けており,データの改ざんがほぼ不可能であることが挙げられる.

移動体通信におけるQUICのコネクションマイグレーションの評価(奥西 理貴)

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Quick UDP Internet Protocol (QUIC)は,Googleの開発している実験的なWeb向けのトランスポートプロトコルである.UDP上で動作し,ハンドシェイクの短縮によるRound Trip Time(RTT)の削減,Head of Line Blocking問題の解消など,TCPが本質的に抱えるいくつかの問題を解決することに成功している.またQUICは,コネクションマイグレーションという仕組みにより,エンドポイントのIPアドレスが変更されても,コネクション再確立の必要がない.そのため,IPアドレスの変更が頻繁に起こりうる移動体通信においては,TCPよりもページ読み込み時間(PLT)の向上が見込まれる.本研究では,エンドポイントが接続中に移動することでコネクションが切り替わる状況を想定し,QUICのコネクションマイグレーションによってQUICでの接続とTCPでの接続の間にPLTの差が生じるか,シミュレーションによって評価する.

車両走行環境を考慮した自動運転(レベル3)段階的引き継ぎ要求の検討(林 聡一郎)

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近年,自動運転システムの開発に取り組まれている.自動運転レベル3では,運転を自動運転システムで行うことができる.しかしながら,自動運転システムが動作限界に達した場合,ドライバが引き継ぎ要求(TOR:Take Over Request)に応答し,運転を引き継ぐ必要がある.そこで,本研究では,TORが発生する可能性がある時に,事前にドライバが道路に目を向けるように警告を発生させる.そして,車両走行環境を考慮し安全でドライバのストレスの少ない警告のタイミングを検証する.

協調型自動運転による車線変更の効率化の検討(平川 貴隆)

近年,自動運転に関する研究は盛んに行われている.自動運転は現在,大きく2つの種類に分けることができ,車両自体に備え付けられたセンサの情報から自律走行を行う自律型自動運転と,V2X(Vehicle-to-everything)通信による車車間通信を利用した,協調型自動運転がある.自律型自動運転は自車が持つセンサで走行ができるが,死角からの車両や,センサで検知範囲外の車両情報などが把握できない.そのため,協調型自動運転ではV2X通信を利用し,センサで検知できない範囲の情報を取得することで,複雑な交通事情でも自動運転での走行が可能になる.本研究では,渋滞,混雑の緩和を目的に,片側2車線道路において一方の車線が塞がれた際に行う,回避のための車線変更をより効率的に行うことができる手法を提案する.シミュレーションにて,交通量,障害物,速度ごとに協調パターンを検討し,その効率を評価する.

ハイブリッドネットワークを利用したV2X通信の仮想化による伝送効率化手法(田中 佳輝)

近年,研究が活発に行われ,道路交通の安全性や利便性の向上が図られている.搭載されたセンサで得た情報を基に自律走行する車両やV2X(Vehicle-to-everything)通信を用いた協調型システムを実装した車両が登場している.車両同士で通信を行う車車間(V2V)通信,路側機と通信を行う路車間(V2I)通信,クラウドとの(V2N)通信など,V2X通信は自動運転の実現においても重要な役割を果たすと考えられる.しかし,V2X通信を行う車両が増加し,一定のエリアにおいて車両密度が高くなると,特に車車間通信における通信トラフィックが増え,衝突によるパケットロスや通信遅延が問題となることが予想される.通信遅延が起きることで運転者やシステムの判断が遅くなり,車両同士の衝突事故や人身事故などに繋がるため,遅延の少ない通信が必要不可欠である.そこで本研究では,セルラーネットワークと車車間通信を併用したハイブリッドネットワークにおいてV2X通信を仮想化し,自車両や周辺車両の走行状態情報に応じて車車間通信の通信範囲や送信周期を動的に変化させることで,通信の伝送効率を向上させる手法を提案する.そして,既存手法と比較して評価することで提案手法の有用性を検証する.