2020年4月4日の第116回月例発表会(M1)において,中井 綾一(M1),東山 紘樹(M1),田中 佳輝(M1),上原 夏紀(M1),細野 航平(M1),中田 輝(M1),奥西 理貴(M1),林 聡一郎(M1)の8名が以下のタイトルで発表を行いました.

  1. V2X 通信における車両走行履歴のブロックチェーン化による位置情報偽装検知モデルの提案(中井 綾一)
  2. コネクテッドカーと非対応車両の混在状況における交差点通過時の安全性・効率の検討(東山 紘樹)
  3. ハイブリッドネットワークを利用したV2X 通信の仮想化による伝送効率化手法(田中 佳輝)
  4. ダイナミックマップを利用したV2X 通信品質のエリア管理手法(上原 夏紀)
  5. 車両走行車線区間に基づくダイナミックマップシステムのエッジサーバ割当方式(細野 航平)
  6. 仮想通貨を利用した予約制マイクロロードプライシングによる車両走行調停モデル(中田 輝)
  7. QUIC における仮認証サーバの導入によるハンドオーバの効率化(奥西 理貴)
  8. 車両走行環境を考慮した自動運転(レベル3) 段階的引き継ぎ要求の検討(林聡一郎)

V2X 通信における車両走行履歴のブロックチェーン化による位置情報偽装検知モデルの提案(中井 綾一)

近年,自動運転やV2X(Vehicle to Everything) 通信の研究が盛んに行われている.このV2X通信は,様々な方式で利用されており,車両の位置情報や周辺情報のリアルタイム処理を可能とする.しかし,現在V2X通信においてサイバーセキュリティに関する懸念がされている.自動運転の場合,V2X 通信に従って,自動車が運転判断を行うことから,攻撃者が誤作動を起こさせたい場合には,V2X 通信を使った偽装行為は極めて有効である.このことから,車両の偽装行為は解決するべき問題となる.そこで本研究では,車両の偽装行為の中で位置情報の偽装に着目する.そして,ブロックチェーン技術を参考に,車両間の相互監視から位置情報の偽装を検知する手法を提案する.

コネクテッドカーと非対応車両の混在状況における交差点通過時の安全性・効率の検討(東山 紘樹)


近年,V2V(Vehicle-to-Vehicle) 通信を利用することで,自車のセンサの検知可能範囲外となる死角や遠距離の情報を入手できるコネクテッドカーが研究されている.自動運転技術とコネクテッドカーの組み合わせにより協調的な交通システムが生まれ,安全で効率的な交通を実現できることが期待されている.しかしながら,今後コネクテッドカーが実用化されたとしても,普及するまでの期間は通信機能を有しない非対応車両も一緒に走行している混在状況は避けられない.この状況では,非対応車両の存在も考慮する必要がありコネクテッドカー同士の情報だけでは不十分である.そこで本研究では,混在状況にける交差点に着目し,コネクテッドカーがセンサで認識した周囲の車両の情報も共有する手法を提案する.そして,非優先道路の車両が交差点に進入通過する際の安全性と効率についてシミュレーション実験によって検討を行う.

ハイブリッドネットワークを利用したV2X 通信の仮想化による伝送効率化手法(田中 佳輝)

近年,ITS の分野において研究開発が活発に行われ,車両が様々なモノと通信する技術であるV2X(Vehicle-toeverything)通信が登場し,道路交通の安全性や利便性の向上が図られている.周辺の車両情報や環境情報を取得することで,高度な安全運転支援や渋滞緩和を目的とした走行制御が可能となる.また,車車間通信で利用されるDSRC(Dedicated Short Range Communications)とセルラーネットワークを併用することで,より効率的なV2X通信手法を目指す研究が活発に行われている. 今後, V2X 通信を行う車両が増加し,都市部などの一定のエリ アにおいて車両密度が高くなると,特に車車間通信にお ける通信トラフィックが増え,通信遅延が問題となること が予想される.通信遅延が発生することで運転者やシス テムの判断が遅くなり,車両同士の衝突事故や人身事故な どに繋がるため,遅延の少ない通信が必要不可欠である. そこで本研究では,セルラーネットワークと車車間通信を併用したハイブリッドネットワークにおいてV2X 通 信を仮想化し,自車両や周辺車両の走行状態情報に応じて車車間通信を制御することで,通信の伝送効率を向上させる手法を提案する.

ダイナミックマップを利用したV2X 通信品質のエリア管理手法(上原 夏紀)

現在,車両に通信機能が搭載されたコネクテッドカーの検討が広く行われている.コネクテッドカーにおいて 安全運転支援や協調型自動運転を実現する場合,V2X 通信の品質が低下すると安全性や信頼性が低下することも 考えられる.通信品質は基地局(アクセスポイント)と車両の位置関係に依存する場合が多く,エリアによる通 信品質を事前に把握しておくことは重要である. 例えば,現在コネクテッドカーの通信として低遅延性 や多数同時接続能力の点から5G(第五世代移動通信システム)が注目されている.しかしながら5G は高い周波数 を用いるため,通信が局所的になることが考えられ,基地局がいたるところに設置されない限り不感地帯が多く発生することになる.この場合,実際の最短経路よりも,V2X 通信が可能な 場所を多く通った方が,車両周辺の情報を多く取得する ことができ,安全で効率的な走行が可能となることで目的地に早く到着できる可能性がある.そこで本研究では,車両情報や交通情報を情報の更新 頻度によって階層化して管理するシステムであるダイナ ミックマップを用いて,各車両が走行中にV2X 通信により基地局から受け取る電波強度を基にエリアごとの通信 品質の情報を提供し,そのデータをマップで共有することで管理する手法を提案する.また,この手法を利用することで車両が多くの通信可能エリアを通過することを示すため,最短経路と提案手法を用いて作成された経路の場合の走行中に取得可能な 情報量の変化をシミュレーションにより評価する.

車両走行車線区間に基づくダイナミックマップシステムのエッジサーバ割当方式(細野 航平)

近年,自動運転車両に搭載されたセンサ情報を無線通信 経由で共有し安全性と効率を目指した協調型自動運転の研究が始まっている.さらに,共有したセンサ情報を管理してアプリケーションを実行するための情報通信プラットフォームであるダイナミックマップシステムが検討 されている.しかし,インターネット上のクラウドで動作 するダイナミックマップシステムでは,センサ情報を送受 信する車両台数が増加した場合,スケーラビリティに関し ての懸念がある.そこで,クラウドで管理している情報を 地理的に分散配置したエッジサーバにおいて管理することで,アプリケーションを効率的に実行可能になると考えられる.本稿では,携帯電話の基地局などにエッジサーバを配置し,道路上を移動する複数の車両に対して,効率的な エッジサーバの割当て方式を検討する.

仮想通貨を利用した予約制マイクロロードプライシングによる車両走行調停モデル(中田 輝)

近年,高度道路交通システム(ITS: Intelligent Transport Systems) の分野において研究が進められており,道路交 通の安全性や快適性は日々進歩している[1].カメラやセンサーなどの搭載された自動車では,周辺の環境を認識して走行することを可能にし,従来のGPS による位置情 報の把握という通信手法と比較しても,より多くの情報を得ることで安全性や快適性を高めている.またこれら の技術を利用し,各車両が得た車両周辺の動的な情報を クラウドへと送信し,道路や建物など静的な地図情報上 に重ね合わせることでダイナミックマップを構築する研究も進められており,自動運転において重要な役割を果たすと期待されている. また,ダイナミックマップを利用した安全運転支援システムの開発やテストをサポートするためのアプリケーションプラットフォームの開発が進められている.こ れに加え,協調型自動運転車両が普及した際に効率の良い交通を実現するため,時間と道路上の空間をグリッドに分割し,ダイナミックマップ上で管理をすることで,各協調型自動運転車両が走行予定経路,時刻を予めダイナミックマップ上に予約申請をして予約情報に基づいた調停を行うという研究も進められている.しかし,予約の際には先に予約の申請を行った車両が優先されることか ら,混雑の予想される道路においては予約が早い者勝ち になってしまうことによる,公平性の欠如という問題が ある.また,どの車両も自由に予約を行うことができる点から,同一道路における車両数の増加を招く可能性がある. 本研究の目的は,協調型自動運転車両が時空間のグリッドに基づく走行調停を行う際に問題となる予約の独占を阻止することとともに,混雑が予想される道路における 車両数の分散を図ることである.そこで本研究では,道路をグリッドに分割した際,それぞれに値段を付けたマイクロロードプライシングという考えを仮想通貨による予約によって実現し,そのシステムの実用性を検証する.

QUIC における仮認証サーバの導入によるハンドオーバの効率化(奥西 理貴)

近年公衆無線LAN の設置数が増加傾向にあり,様々な 利用形態が想定される.ユーザが移動すると,端末は移動 に伴って,あるアクセスポイント(AP)から別のAP へ接 続先を切り替えるハンドオーバを行うが,公衆無線LAN の配備が進み,ハンドオーバ先に選択できるAP が多数存 在する環境になると,隣接するAP が同一ドメインのもの とは限らず,再認証が必要となる場合がある.IEEE802.1X 認証など,公衆無線LAN においても求められるセキュリ ティ強度の高いユーザ認証方式は大きな遅延を生み,特 にクラウド上など遠隔地に認証サーバを配置すると,認 証遅延はその通信遅延によってさらに増加する.そのた め,音声やマルチメディアなどリアルタイム性のあるア プリケーションを利用していると,サービス中断時間が 発生する場合がある.本研究では,この問題を解決するために,QUIC(Quick UDP Internet Connections) を使用し,ハンドオーバ時の再 認証が完了するより前に一時的に接続を許可することで, 認証処理の完了を待たずにアプリケーションのデータ送受信を再開できるようにする方式を提案する.

車両走行環境を考慮した自動運転(レベル3) 段階的引き継ぎ要求の検討(林 聡一郎)

現在,SAE が自動運転を5 つのレベルで定義1) している.自動運転レベル3 では,ドライバが常に道路の見る必要はなく自動で運転可能であるがシステムが動作限界 に達した場合は,ドライバが運転の引き継ぎ要求(TOR: Take Over Request)に応答して運転を引き継ぐ必要がある.しかし,運転の引き継ぎ要求の提供だけでは交通状況や天候,時刻といった車両走行環境によっては,運転を 引き継ぐのに十分な余裕がない場合がある.本研究では,運転の引き継ぎ要求が発生する可能性がある時に,運転の引き継ぎ要求の前に可変のタイミングで 事前通知を提供することで,ドライバの視線を道路に向 かせて道路状況を十分に確認できて運転の引き継ぎ要求 に備えられるようにする段階的引き継ぎ要求を提案する.