2020年5月9日の第117回月例発表会(B4)において,塚崎 拓真(B4),杉本 涼輔(B4),山村 竜也(B4),池田 仁(B4),山本 浩太郎(B4),殿村 茂天(B4),竹内 一真(B4)の7名が以下のタイトルで発表を行いました.

  1. 遅延改善のための中継ノードを考慮したOpenFlowによるネットワーク切替手法(塚崎 琢磨)
  2. 自動車の隊列走行におけるアドホックネットワーク通信の効率化手法(杉本 涼輔)
  3. ロジスティックモデルを用いた車両位置相互監視によるV2Xなりすまし検知手法の効率化(山村 竜也)
  4. 共通座標系を用いた複数人でのARによるオブジェクト表示手法(池田 仁)
  5. 周辺環境を考慮した車両情報送信手法の安全性・効率の検討(山本 浩太郎)
  6. 片側1車線道路における路上駐車車両の回避支援の有効性の検討(殿村 茂天)
  7. ARを利用したドローンの目視外飛行の可視化(竹内 一真)

遅延改善のための中継ノードを考慮したOpenFlowによるネットワーク切替手法(塚崎 拓真)

 現在,スマートフォンなどによる携帯回線やWi-Fiなどの無線通信技術の利用が盛んである.また,2020年には5G(第5世代移動通信システム)が実用化されることから,IoT(Internet of Things)のさらなる普及化も見込まれる.しかし,それに伴い,動画像伝送等の利用の拡大による,携帯回線のトラフィック量増加,および通信の遅延が発生することも予想される.総務省による2017年6月から2018年6月までの1年間の統計によると,月間平均トラフィックは約1.4倍増加している.また,超高速・超低遅延・多数同時接続を特徴としている5Gであるが,高周波数のため,電波が回り込むという特性がない.そのため,障害物を通り抜けにくいという側面もある.このことから,効率的な通信を行うためには,複数の通信回線の管理,切り替えが必要になる.
 そこで本研究では,モバイルノードが通信しあう際,中継ノードの位置などを考慮し,OpenFlowを用いて,最適なネットワークに切り替えるという手法を提案し,シミュレーションによって効率性を評価する.

自動車の隊列走行におけるアドホックネットワーク通信の効率化手法(杉本 涼輔)

 近年,ITS分野では車車間通信を用いた道路交通における安全性,効率性の向上を目指す研究が活発である.また,物流トラックの隊列走行に代表されるように車車間通信を用いて各車両の電子制御を行い,隊列車群を形成する研究も行われている.中でも,これらの車車間通信,および道路設備との車路間通信において各車両,設備に搭載された無線LAN機器を用いて接続されたノードのみでネットワークを構成する自律分散型ネットワークVANET(Vehicular Adhoc Networks)は基地局などのインフラ設備に依存せずに車両間連携が取れるため関心が向けられており,隊列走行に用いた場合はグループ融合や分離などの管理が容易になるメリットも考えられる.
 そこで本研究では,通常車両を含む自動車の隊列走行グループにおけるアドホックネットワーク構築に着目し,隊列走行で利用可能な,GPSより高精度かつ環境耐性の高いグループ内相対位置確認手法,およびマルチホップ通信効率化手法の二つの提案を行う.

ロジスティックモデルを用いた車両位置相互監視によるV2Xなりすまし検知手法の効率化(山村 竜也)

 近年,ITS(Intelligent Transport Systems)の分野において,自動運転や車車間通信の研究が盛んに行われている.車両は,車車間通信,路車間通信,歩行者の所持する端末との通信,携帯回線を利用したクラウドとの通信を行うことができる.これらを総じてV2X(Vehicle To Everything)通信という.車両がV2X通信を行うことで,クラウドは様々なデータを収集することができ,様々なシステムやサービスを提供することができる.その反面,クラウドを利用したシステムにおいて,クラウドに対する不正なデータ転送がシステムに大きな影響を与える.クラウドに対する不正なデータの転送やクラッキング行為が増加傾向にあり,クラウドを利用した安全運転支援サービスに対する攻撃も脅威となる.なお,本論文において「なりすまし」とは,車両がクラウドに不正なデータを送信する行為と定義する.車両がクラウドに不正なデータを送信する行為として,走行データの偽装や位置データの偽装などがある.
 本研究では,車両がV2X通信によって,車両の位置データを周囲と相互監視し,クラウドが車両から受け取るデータから不正なデータを効率的に検知することを目的とする.

共通座標系を用いた複数人でのARによるオブジェクト表示手法(池田 仁)

 近ごろ,AR:(Augmented Reality)の分野においてスマートフォンでの情報共有手法の研究開発が活発に行われ,情報共有の簡便さの向上が図られている.ライダスキャナを用いて空間の3Dマップを作成し,床,壁,天井,窓などを区別するためのシーンジオメトリAPI (API : ApplicationProgramming Interface)が搭載され,人の動きをキャプチャしARの世界に人物を映し出すことができるモーションキャプチャなどの機能が備わったApple社のARKitや,スマートフォンの優れたカメラやセンサーの機能を利用し,端末のみで高い精度の空間認識をするGoogle社のARCoreなどが登場している.高性能なカメラ,ディスプレイ,プロセッサーを小さな筐体に詰め込んだスマートフォンはARとの相性が非常に良く,スマートフォンを利用することでARは場所に縛られることなく物を起点とした展開が可能になった.これによりARで扱うことのできる情報量や,コンテンツが増えARは様々な分野に採用されている.しかしARで扱う事のできる情報量が増えてきている一方で,一般的なARの問題点として,位置や動きの取得方法,高精度なオブジェクト表示,動作のリアルタイム性,複数人が利用した場合の整合性の問題などが挙げられる.現在のオブジェクトの表示はマーカーとカメラの位置といったような相対的な位置関係を利用して行われる.相対的な位置関係を用いる事で,複数人で見たときのオブジェクトの位置ずれなどが起こってしまう.
 そこで本研究では,統一された共通の座標系を想定し,その中にマーカー,カメラ,オブジェクトを配置する事で,複数人でのオブジェクト表示に整合性を持たせる手法を提案する.

周辺環境を考慮した車両情報送信手法の安全性・効率の検討(山本 浩太郎)

 近年,ITS(Intelligent Transport Systems)の分野において研究開発が活発に行われ,道路交通の安全性や利便性の向上が図られている.搭載されたセンサで得た情報を基に自律走行する車両やV2X(Vehicle-to-everything)通信を用いた協調型システムを実装した車両が登場している.車両同士で通信を行う車車間(V2V)通信,路側機と通信を行う路車間(V2I)通信,セルラーネットワークを用いたV2Nによる通信など,V2X通信は自動運転の実現においても重要な役割を果たすと考えられる.また,最近では自動運転のための技術として道路及び車両の位置が車線レベルまで特定出来る高精度三次元地理空間情報に運転をサポートするための情報を載せたダイナミックマップの研究が行われている.事故や渋滞といった道路上の交通情報をリアルタイムで配信及び管理することで,事故防止や渋滞緩和に繋がる.しかし,V2X通信を行う車両が増加し車両密度が高くなると,衝突によるパケットロスや通信遅延が問題となることが予想される.通信遅延が起きることで運転者やシステムの判断が遅くなり,車両同士の衝突事故や人身事故などに繋がるため,遅延の少ない通信が必要である.車両のデータ伝送効率化の手法については,クラウド連携を想定した車群形成によるデータ伝送の研究や走行状況を考慮した車両情報の効率的V2X送信手法の研究[3]が行われている.これらの研究では,シミュレーション環境が限定されている.しかし,実際の走行環境では交差点や基地局の間隔は様々である.
 そこで,本研究では,複数のシミュレーション環境で,複数の手法を用いてデータ伝送シミュレーションを行う.そして,周辺環境を考慮した安全で効率的な車両情報送信手法について検討する.

片側1車線道路における路上駐車車両の回避支援の有効性の検討(殿村 茂天)

 近年自動運転の研究が盛んに行われ,メーカなどは実用化に向けて取り組んでいる.それに加えて、V2X(Vehicle-to-evereything)通信の研究も行わている.車が色々な物と通信が出来るようになることで死角など、自車両だけでは得ることの出来なかった情報を入手することが可能となる.このことにより,交通事故の減少や渋滞の軽減,運転者の心理的ストレスの軽減が期待できる. 今後、コネクティッドカーや自動運転車が実用化されて,広く普及したとしても自ら運転したいという人は一定数存在すると想定される.その人達には「判断」と「認知」を支援する必要がある. 
 そこで本研究では,通信可能な車両を運転する人の支援を行い,評価を行う.今回は,片側1車線道路の路上駐車車両の回避に限定して,支援の有効性を評価することにする.

ARを利用したドローンの目視外飛行の可視化(竹内 一真)

 近年,ドローン及びUAV(Unmanned Aerial Vehicl)の研究,開発が進められている.企業だけでなく一般家庭でも使用されることが増えてきたが,使用場所はかなり限られている.ドローンを使用している環境としては主に障害物も何もない空間となる.つまり常に肉眼で目視できる位置にドローンがいる必要がある.例えばドローンを走行させている時に,ビルの物陰などによってドローンが隠れてしまった際などは補助者によるドローンの操縦の助言が必要になってくる.また,ドローン搭載のカメラやセンサなどでドローンの現在地を把握しているが,ドローンの搭載のカメラの映し出している視野が狭かったり,ドローンの保持している位置情報が正確ではなく,不安要素が残る.現在,目視外飛行は国土交通省によって補助者なしの場合は申請が承認されない限りは禁止となっている.そんな中,ドローンの有人地帯での目視外飛行の実現を目指している.
 本研究では,遮蔽物によって隠れてしまったドローンをスマートグラスを用いることによって,リアルタイムに可視化することでユーザへの目視外飛行における視覚的な支援を行う手法を提案した.