2020年6月13日の第118回月例発表会(M2&DICOMO発表者)において,岸田 慎之介(M2),畑山 諒太(M2),中川 凌(M2),生駒 大志郎(M2),岡村 俊樹(M2),林 聡一郎(M1)の6名が以下のタイトルで発表を行いました.

  1. 端末通信と基地局通信を統合させたネットワークアーキテクチャの提案(岸田 慎之介)
  2. 車内でのPC画面注視が起因となる車酔い緩和手法の提案(畑山 諒太)
  3. 動的遮蔽物を考慮したビーコン情報のマルチホップによる屋内位置推定(中川 凌)
  4. ブロックチェーンにおけるProofofWorkの51%攻撃対策手法の提案(生駒 大志郎)
  5. 車両相互監視と位置外れ値検出によるV2X通信なりすまし検知手法(岡村 俊樹)
  6. 車両走行環境を考慮した自動運転の段階的引き継ぎ要求のシミュレーション検討(林 聡一郎)

端末通信と基地局通信を統合させたネットワークアーキテクチャの提案(岸田 慎之介)

現在,携帯電話などの移動端末は基地局とネットワークを構築して通信を行っている.しかし,コネクテッドカーと呼ばれる常時ネットワークに接続している車両やIoT(InternetofThings)関連した製品やアプリ,対話型コミュニケーションも登場している.また,日本は世界有数の災害大国でもあり,大規模災害発生時において基地局が通信できない状況に備えて,移動端末間の直接通信の技術が重要となってくる.この技術については,携帯電話の通信について標準規格の仕様や検討を行っている3GPP(ThirdGenerationPartnershipProject)において,LTE-AdvancedRelease12で端末間(D2D:DevicetoDevice)の直接通信が登場して以降,Release14では携帯電話の通信を使用してV2X(VehicletoEverything)通信を行うC-V2Xが規定された1).また,低電力で広範囲に通信することが可能なLPWA(LowPowerWideArea)が登場し,データを収集して送信を行うIoT向けの通信基盤などに使われつつある2).従来からある,BluetoothやWi-Fiを使ってノード同士が直接通信する機能もあるが,LPWAといった基地局と通信するネットワークとノード同士で通信するネットワークを統合したネットワークアーキテクチャはまだ確立されていない.本研究では,基地局を経由して通信を行うネットワークと,端末同士で通信を行うネットワークを統合させた,ネットワークアーキテクチャを提案する.特に,端末が密集している地域において,ネットワーク仮想化技術を利用して,電波の有効利用を図る.

車内でのPC画面注視が起因となる車酔い緩和手法の提案(畑山 諒太)

近年,自動運転に関する研究が盛んに行なわれいる.車が自動運転化されることにより,運転者は不要となり,車内環境は大幅に変わることが予想される.今まで必要だった運転者は一乗員となり,車内ではより自由な時間を過ごすことができるようになる.そういった将来,車内ではPC画面を注視する機会が増え,車酔いが増加されると予想される.なぜなら,走行している車内で画面を注視すると,内耳から脳に送られてくる信号と眼球から脳に送られてくる信号に不一致が生じ,脳が「異常」と判断し,自律神経が不安定になる.そして,自律神経が不安定になった結果,吐き気や頭痛といった車酔いの症状が表れるのである.本研究は,車内でのPC画面注視が起因となる車酔いの緩和手法を提案する.PC利用者に右左折方向,出発タイミング,ブレーキタイミングをPCに取り付けられたLEDで提示する.これにより,PC利用者は車の揺れを予測することができ,運転者の旋回方向への頭部運動を再現することができる.先行研究から,運転者の旋回方向への頭部運動は車酔いの低減につながることが示されており,本提案手法によって,PC画面注視による車酔いの緩和が期待できる.検証実験では,実験参加者には走行車内で,提案手法を用いた場合と用いない場合で,車内でPC作業を行ってもらう.そして,唾液,心拍数,アンケート,タイピングタスクの評価結果から提案手法の有用性を示す.

動的遮蔽物を考慮したビーコン情報のマルチホップによる屋内位置推定(中川 凌)

近年,スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の利用数が増加しており,モバイル端末上で利用できる様々なサービスがある.そういったサービスには位置情報を利用したものも多くある.現在,ユーザーが自身の位置情報を入手する方法として,GPS(GlobalPositioningSystem)を用いたサービスの利用が一般的である.しかし,屋内や地下といった場所では,GPS信号が届かないことがあり,そういったサービスが利用できないという問題がある.それに伴い,屋内における位置推定に関して多くの研究がなされている.屋内位置推定の手法として,Wi-Fi,BLE(BluetoothLowEnergy)やスマートフォンなどのモバイル端末に搭載されたセンサなどを用いたものがある.これらの屋内位置推定は実用化に向けた開発が行われており,駅や空港,商業施設などでの利用が期待されている.本研究では,BLEビーコンを増やすのではなく,周囲のスマートフォンやタブレットといったモバイル端末を利用することで位置推定の精度の向上を図る.またその際に,人が複数いることを想定しているため,BLEの電波強度が人体の影響を受けることを考慮した手法を提案する.

ブロックチェーンにおけるProof of Workの51%攻撃対策手法の提案(生駒 大志郎)

近年,暗号通貨は世界で流通し,どこにも中心を持たないP2P技術を用いた分散型の通貨として,また,法的通貨との交換価格の変動幅や交換所の破綻などの事件で注目を集めている.仮想通貨の代表としてビットコインが挙げられるが,ビットコインの実装を支えている技術がブロックチェーンである.ブロックチェーンは分散型取引台帳とも呼ばれ金融機関を介さず,ユーザ同士でシステムを管理しあう構造を取り,ブロックチェーンを支える技術である図1のように,報酬を得るためにマイナーが電力を消費し,計算することで新しいブロックを作成する技術である,ProofofWorkによる改竄の困難性や非中央集権性から様々な分野での応用が期待されている.ProofofWorkは改竄が困難ではあるが,電力消費量が多いことや51%攻撃というデメリットもある.そのため,近年は,ProofofStakeという技術が台頭している.ProofofStakeは,PCの計算量に比例して報酬が貰えるのではなく,暗号通貨の保有率に比例して報酬が貰える.これは,より多くの保有量を持つ人が自分が大量に持っている通貨の価値を下げるようなことはしないだろうという信頼のもと成立している仕組みであり,セキュリティ面においても電力面においても優れているとされている.しかしながら,ProofofStakeは悪意のあるユーザにとって,改竄するメリットがないというだけで改竄は容易にできてしまう.利益を求めず改竄を行うユーザが現れる可能性を考えておらず,本当に安全であるとは言い難い.それに比べて,ProofofWorkは,51%攻撃を除けば,事実上,改竄できないので,今後も必要となる技術であると考えられる.

車両相互監視と位置外れ値検出によるV2X通信なりすまし検知手法(岡村 俊樹)

現在,V2X:VehicletoEverything通信を用いて,車両間やインフラ,クラウドなどと通信を行うことができるコネクテッドカー(以下CVと呼ぶ)が開発されている.このCVは,自車の位置・速度情報や道路情報などを他車やクラウドに送受信することで様々なサービスが提供可能であると言われている.しかし,ネットワークに繋がることによるCVに関するセキュリティの問題が挙げられる.攻撃方法は車載ネットワークへの攻撃やV2X通信を用いた攻撃など多種多様にわたるが,その中に車両による位置情報のなりすましがある.これは,犯罪を目的としたCVが他車やクラウドに対して,故意に誤った位置情報をクラウドなどに送信する攻撃である.この結果,交通渋滞などを誘発などを行うことが可能である.今後来るであろうコネクテッドカー社会において,偽装された位置情報の検知は重要であると言える.先行研究において,V2V通信を用いて車両を相互で監視することにより,車両のなりすましを検知する手法が提案されている.先行研究では,なりすましを検知する際,誤検知率が高いため誤検知を減らす手法を考案することが必要である.本研究では,交差点におけるなりすましの検知を行う手法を提案する.

車両走行環境を考慮した自動運転の段階的引き継ぎ要求のシミュレーション検討(林 聡一郎)

近年,自動運転レベル3を目指し,メーカーや技術者が取り組んでいる.自動運転レベル3では,ドライバが常に道路の見る必要はなく自動で運転可能である.しかし,システムが動作限界に達した場合は,ドライバが運転の引き継ぎ要求(TOR:TakeOverRequest)に応答して,運転を引き継ぐ必要がある.しかし,運転の引き継ぎ要求の提供だけでは交通状況や天候,時刻といった車両走行環境によっては,運転を引き継ぐのに十分な余裕がない可能性がある.そこで,本研究では運転の引き継ぎの要求が発生するかもしれない可能性がある時に,運転の引き継ぎ要求の前に可変のタイミングで事前通知を提供することで,ドライバの視線を道路に向かせて道路状況を十分に確認できるようにして運転の引き継ぎ要求に備えられるようにする段階的引き継ぎ要求を提案する.ドライビングシミュレータを用いて評価を行なった結果,事前通知は必要であり,事前通知のタイミングを可変する必要があることを示し,安全でドライバのストレスが少ない事前通知の提案手法のタイミングを示した.さらに,事前通知のタイミングについて提案手法のタイミングと関連研究のタイミング,事前通知がない場合のドライバの余裕とストレス,ブレーキの踏み方を比較して,実験シナリオとドライバの特性によっては提案手法のタイミングの方が向上することを示した.