2020年8月29日の月例発表会(B4&FIT)において,岡村 俊樹(M2),池田 仁(B4),竹内 一真(B4),山本 浩太郎(B4),杉本 涼輔(B4),殿村 茂天(B4),塚﨑 拓真(B4),山村 竜也(B4)の6名が以下のタイトルで発表を行いました.

  1. 車両相互監視と位置外れ値検出によるV2X通信なりすまし検知手法(岡村 俊樹)
  2. Data Distribution Serviceを用いたセンサ情報解析システムの構築(池田 仁)
  3. ARを利用した障害物による死角領域内のドローンの可視化(竹内 一真)
  4. 走行環境を考慮した車両情報の効率的送信手法の検討(山本 浩太郎)
  5. 車両走行情報を考慮した優先度を利用する車車間通信による走行制御モデル(杉本 涼輔)
  6. 通信を用いた追い越しおよび駐停車車両回避支援の有効性の検討(殿村 茂天)
  7. 遅延改善のための中継ノードを考慮したOpenFlowによるネットワーク切り替え手法(塚﨑 拓真)
  8. ロジスティックモデルを用いた車両位置相互監視によるV2X通信なりすまし検知手法の効率化(山村 竜也)

車両相互監視と位置外れ値検出によるV2X通信なりすまし検知手法(岡村 俊樹)

 現在,V2X(VehicletoEverything)通信を用いて,車両間やインフラ,クラウドなどと通信を行うことができるコネクテッドカー(以下,CV)が開発されている.CVは,自車両の位置・速度情報や道路情報などを他車両やクラウドに送受信することで,様々なサービスが提供可能である.しかし,ネットワークに繋がることでCVに関するセキュリティの問題が生ずる.CVの脆弱性を狙った攻撃として車載ネットワークへの攻撃やV2X通信を用いた攻撃などがある.その1つに車両による位置情報のなりすましがある.位置情報のなりすましは,犯罪を目的としたCVが他車両やクラウドに対して,故意に誤った位置情報を送信する攻撃である.位置情報のなりすましの結果,交通渋滞や事故などを誘発することが可能である.CV社会において,偽装された位置情報の検知は重要である.本論文では,位置のなりすましを検知する手法を提案する.

Data Distribution Serviceを用いたセンサ情報解析システムの構築(池田 仁)

 近ごろ,DDS(Data Distribution Service)がITS(Intelligent Transport Systems)や協調型自動運転の分野で注目されてきている.DDSとはデータ中心のPub/Sub方式が取られているミドルウェアの仕様のことである.DDSで使用されているPub/Sub方式以外には,ポーリングと呼ばれる構成がある.ポーリングはハードウェアやOS(Operating System)に依存せず手軽に実装できることが利点として挙げられるが,デメリットは様々である.ホスト側が主導権を握っているため,処理が行われるまでのタイムラグが発生する場合があり,また接続される機器の増加によりポーリングの回数が増えると,通信トラフィックが増えてサーバー側に負荷がかかり,トラブルの原因になる場合もある.またポーリングでは周期的に通信の有無を確認するため,機器の状態の変化を知るのが遅れることがあるというデメリットもある.一方でDDSでは,複数の配信ノード(Publisher)が複数の受信ノード(Subscriber)に同時にデータを送信することが可能で,各ノードが関連するデータの管理を実施しているため,サーバーに負担をかけることがない.また,DDSにおいてデータは,信頼性やシステム正常性,セキュリティを含む柔軟なQoS(Quality of Service)特性で共有される.

ARを利用した障害物による死角領域内のドローンの可視化(竹内 一真)

 近年,ドローン及びUAV(UnmannedAerialVehicl)の研究,開発が進められている.中でもカメラ付きのドローンは人気が急上昇してきている.カメラ搭載のドローンを使用する場合では,操縦者はドローンから送られてくる映像を元に操縦が可能となる.そのような操縦方法によって,ドローンは人間が到達することができない,または危険すぎる場所に簡単に飛ぶことができるようになる.しかしその場合,操縦者はドローンの限定された視野で操作するため,狭い環境などでの操作が困難である.また,ドローン搭載のセンサなどでドローンの現在地を把握しているが,ドローンの保持している位置情報が正確ではなく,安全性が高いとは言えない.また,高度計算を気圧計で測ることがほとんどなので,気流の変化などですぐ誤差が出る問題点がある.本研究では,遮蔽物によって隠れてしまったドローンをスマートグラスを用いることによって,リアルタイムに可視化することで,操縦者の死角領域内にあるドローンの位置を操縦者目線で確認できるような視覚的な支援を行う手法を提案した.この際に安全性を高めるため,GPSのような位置測位を使わずステレオカメラを用いた位置測位を用いることで,位置精度を向上させ,結果的に安全性を向上させることを目的とした.

走行環境を考慮した車両情報の効率的送信手法の検討(山本 浩太郎)

 近年,ITS(IntelligentTransportSystems)の分野において研究開発が活発に行われ,道路交通の安全性や利便性の向上が図られている.搭載されたセンサで得た情報を基に自律走行する車両やV2X(Vehicle-to-everything)通信を用いた協調型システムを実装した車両が登場している.車両同士で通信を行う車車間(V2V)通信,路側機と通信を行う路車間(V2I)通信,セルラーネットワークを用いたV2Nによる通信など,V2X通信は自動運転の実現においても重要な役割を果たすと考えられる[1].また,最近では自動運転のための技術として,道路及び車両の位置を車線レベルまで特定出来る高精度三次元地図に,運転をサポートするための情報を載せたダイナミックマップの研究が行われている.事故や渋滞といった道路上の交通情報をリアルタイムで配信及び管理することで,事故防止や渋滞緩和に繋がる.しかし,V2X通信を行う車両が増加し車両密度が高くなると,通信トラフィックの増加によるパケットロスや通信遅延が問題となることが予想される.通信遅延が起きることで運転者やシステムの判断が遅くなり,車両同士の衝突事故や人身事故などに繋がるため,遅延の少ない通信が必要である.そこで本研究では,走行している車両の情報や周辺の道路情報に応じてダイナミックマップと通信を行う周期を動的に変化させ,車両とダイナミックマップ間の通信トラフィックを低減することで,通信の伝送効率を向上させる.

車両走行情報を考慮した優先度を利用する車車間通信による走行制御モデル(杉本 涼輔)

 近年,ITS分野では車車間通信を用いた道路交通における安全性,効率性の向上を目指す研究が活発である.その代表的なものとして自車両の位置情報や速度情報などを周囲にブロードキャストするBasicSafetyMessage(BSM)などの安全運転支援通信や,フラッディングを用いて遠くの車両へ情報配信を行う通信といったものが挙げられる.しかしこれらの車車間通信において,車両混雑時の通信の衝突による通信遅延やパケットロスが問題とされている.これを解決するために優先度の高い通信について,アクセスポイント(AP)などのハイブリットコーディネータ(HC)によって帯域を確保するHCCAと,優先度の低い通信より短い待機時間を経て送信を開始するEDCAと呼ばれる機能を用いた手法が研究されている.中でもAPを必要としないEDCAの優先度制御は車車間通信において注目されており,メッセージごとに必要とされるリアルタイム性で優先度制御を行う研究[1]や,フラッディングの再送制御にEDCAの優先度制御を用いた研究[2]などが行われている.本研究ではBSMをベースにこのEDCAを用いた速度や交差点からの距離といった走行情報を考慮する優先制御を行い,危険度の高い車両のメッセージを優先取得する手法を提案する.

通信を用いた追い越しおよび駐停車車両回避支援の有効性の検討(殿村 茂天)

 近年自動運転の実用化,普及に向けてV2X(Vehicle-toevereything)通信といった技術の研究が盛んに行われている.それに伴い,高速道路や一般道路においてもドライバーを支援するためのシステムが搭載された車が市場に導入されている.例えば,ACC(AdaptiveCruiseControl),前方衝突警告,車線逸脱警報などがある.最近では自動追い越しを行うことも出来る車も市場に導入されている.追い越しは運転の中では複雑で難しい操作を必要とする行為である。中でも片側1車線道路のような,路上駐車車両の回避や前の遅い車を追い越す際に,対向車線にはみ出して走行する必要がある行為は危険性が非常に高い.また,追い越しの際,ドライバーは対向車の速度や位置を見誤る事が多く,判断を誤ることで事故を起こしてしまう。V2V通信を用いることで,車が他車と通信が出来るようになり,他車の速度や位置や死角など,自車両だけでは得ることの出来なかった情報を入手することが可能となる.このことにより,交通事故の減少や渋滞の軽減,運転者の心理的ストレスの軽減が期待できる. また,今後コネクティッドカーや自動運転車が実用化されて,広く普及したとしても自ら運転したいという人は一定数存在すると想定される.その人達には「判断」と「認知」を支援する必要がある.そこで本研究では,片側1車線道路に着目し,駐停車車両回避および追い越しの支援の有効性を検討する.

遅延改善のための中継ノードを考慮したOpenFlowによるネットワーク切り替え手法(塚﨑 拓真)

 現在,スマートフォンなどによる携帯回線やWi-Fiなどの無線通信技術の利用が盛んであり,パケット通信の定額制やデータ通信の高速化が進んでいる.それに伴い,YouTubeやNetflixなどの携帯端末向けの動画配信サービスが増加し,動画像伝送等の利用が拡大している.総務省による2017年6月から2018年6月までの1年間の統計によると,月間平均トラフィック量は約1.4倍増加している.今後,さらなる携帯回線のトラフィック量増加,および通信の遅延が発生することが予想される.また,インフラストラクチャモードの無線LAN通信は,カバーエリアが狭く,移動体通信において高品質な通信を行うことは困難である.本研究では,前述の問題点を踏まえ,移動体通信における低帯域な携帯回線や無線LANの利用時においても高品質で低遅延の通信を行うことを目的とし,モバイルノードがLTEなどの携帯回線やWi-Fiなどのインフラストラクチャモードの無線LAN通信(以下,Wi-Fi通信とする)において,パケット送信が不可となった際に,OpenFlowを用いたアドホックネットワークに切り替えるという手法を提案する.

ロジスティックモデルを用いた車両位置相互監視によるV2X通信なりすまし検知手法の効率化(山村 竜也)

 近年,ITS(IntelligentTransportSystems)の分野において,自動運転や車車間通信の研究が盛んに行われている.車両は,車車間通信,路車間通信,歩行者の所持する端末との通信,携帯回線を利用したクラウドとの通信を行うことができる.これらを総じてV2X(VehicleToEverything)通信という.車両がV2X通信を行うことで,クラウドは様々なデータを収集することができ,様々なシステムやサービスを提供することができる.その反面,クラウドを利用したシステムにおいて,クラウドに対する不正なデータ転送がシステムに大きな影響を与える[1].クラウドに対する不正なデータの転送やクラッキング行為が増加傾向にあり[2],クラウドを利用した安全運転支援サービスに対する攻撃も脅威となる.なお,本論文において「なりすまし」とは,車両がクラウドに不正なデータを送信する行為と定義する.車両がクラウドに不正なデータを送信する行為として,走行データの偽装や位置データの偽装[3]などがある.本研究では,車両がV2X通信によって,車両の位置データを周囲と相互監視し,クラウドが車両から受け取るデータから不正なデータを効率的に検知することを目的とする.