2020年10月10日の第121回月例発表会において,中田 輝(M1),東山 紘樹(M1),細野 航平(M1),中井 綾一(M1),奥西 理貴(M1),林 聡一郎(M1)の6名が以下のタイトルで発表を行いました.

  1. 走行調停のための時空間グリッド予約を実現する仮想通貨利用マイクロロードプライシング(中田 輝)
  2. コネクテッドカーと非対応車両の混在状況における時空間グリッド予約システムを用いた交差点調停手法(東山 紘樹)
  3. ネットワーク情報システム研究室ダイナミックマッププラットフォームにおけるQoSによる効率的通信環境の検討(細野 航平)
  4. V2X通信における車両密度を考慮した動的仮名変更方式の検討(中井 綾一)
  5. MPQUICを用いた通信経路喪失によるパケットロス削減手法(奥西 理貴)
  6. ネットワーク情報システム研究室車両走行環境を考慮したHUDを用いたAR表示による安全と効率の検討(林 聡一郎)

走行調停のための時空間グリッド予約を実現する仮想通貨利用マイクロロードプライシング(中田 輝)

 近年,静的な地図上に動的な情報を重ね合わせた仮想的なデータベースであるダイナミックマップに関する研究が進められており,協調型自動運転車両の走行調停において重要な役割を果たすと期待されている.その応用として,このダイナミックマップを利用することによって,自動運転車がこれから走行をする経路の時間と空間を事前に予約し,他の車両を排除することでよりスムーズな走行を可能にする時空間グリッド予約という考え方を確立した.ここでは,経路予約は予約の申請順に承認されるという方式を採用している.本研究ではこれを発展させ,ダイナミックマップでの時空間グリッド予約に料金徴収による優先度を設定する.自動車が道路を使用することに対して料金を徴収することを指すロードプライシングという考え方が存在する.今回はこのロードプライシングの考えのもと,道路をグリッドに分割しそれぞれに値段を付け仮想通貨によって支払いを行うマイクロロードプライシングという方式を考えた.このマイクロロードプライシングを模擬的に実現するシステムを構築し,評価を行う.

コネクテッドカーと非対応車両の混在状況における時空間グリッド予約システムを用いた交差点調停手法(東山紘樹)

 近年,自動運転に関する研究が盛んにおこなわれている.車両が自らのセンサで周囲の状況を把握し,自律的に自動走行を行うものに加えて,通信を用いて他の車両と情報を共有して協調的に走行するコネクテッドカー(ConnectedAutonomousVehicles)についても検討が進められている.コネクテッドカーが情報を共有する仕組みの1つとして,ダイナミックマップがある.ダイナミックマップは車両情報や道路情報を情報の更新頻度によって階層化して管理するシステムである.これにより,コネクテッドカーあるいは走行調停システムは周辺環境の変化に対応した動的な地図を取得可能となり,リアルタイムかつ高精度に周辺環境を認知することが可能となる.このダイナミックマップを応用した走行調停手法として時空間グリッド予約システムがある.時間と道路上の空間をグリッドに分割し,ダイナミックマップ上で管理し,各コネクテッドカーが事前に特定の時刻に通過予定の地点を予約し,予約情報に基づいた調停・走行を行うものである.先行研究ではこの基礎となるシステムを単一交差点を想定して構築し,旅行時間や計算量において考察が行われ,他の予約ベースの走行調停手法に比べて有用である可能性を示した.しかし,いくつかの解決すべき問題点があり,本研究では問題点の検証を行った上で改善手法を提案する.

ネットワーク情報システム研究室ダイナミックマッププラットフォームにおけるQoSによる効率的通信環境の検討(細野 航平)

 車載センサから得られたデータはダイナミックマップを管理するサーバに送信され,それに基づいて協調型自動運転を実現するアプリケーションが動作する.そのため,車両から送信される動的情報は常にサーバへと送信される必要があり,サーバは低遅延でデータを処理し,車両に送信する必要がある.また,一般に車両は100ミリ秒周期でダイナミックマップに送信する.しかし,ダイナミックマップが扱う車両台数は膨大で,すべての車両が高頻度にデータを送信し続けると輻輳が懸念される.また,一般車車両と緊急車両から送信されるデータを同等に扱うと,交通安全サービスに支障をきたす恐れがある.そこで,優先処理機能を用いることで車両の送信するデータを効率的に通信・処理することが期待できる.優先処理機能として,車両側で送信間隔を調整する方法と,データを受信・処理するサーバ側でデータの処理を調整する方法がある.通信の輻輳を考えると,車両側で送信間隔を調整することで効率化が期待できるが,我々はエッジを用いたダイナミックマップを検討しており,サーバでの処理がボトルネックとなる.そこで,車両から大量に送信されるデータに対して優先度を決定し,各優先度に応じたQoSによる優先処理機能を実現し,有効性を検討する.

V2X通信における車両密度を考慮した動的仮名変更方式の検討(中井 綾一)

 現在,V2X(Vehicle to Everything)通信を用いて,車両間やインフラ,クラウドなどと通信を行うことができるコネクテッドカー(以下,CV)が開発されている.CVは,自車両の位置・速度情報や道路情報などを他車両やクラウドに送受信することで,様々なサービスが提供可能である.しかし,CVがネットワークに繋がることでセキュリティの問題が生ずる.CVの脆弱性を狙った攻撃として車載ネットワークへの攻撃やV2X通信を用いた攻撃などがある.その1つに車両による位置情報のなりすましがある.位置情報のなりすましは,犯罪を目的としたCVが他車両やクラウドに対して,故意に誤った位置情報を送信する攻撃である.位置情報のなりすましの結果,交通渋滞や事故などを誘発することが可能であり1),CV社会において,偽装された位置情報の検知は重要である.本研究では,「なりすまし」を,車両が故意にクラウドに不正データを送信することと定義する.本論文では,位置情報のなりすましを検知する手法を提案する.

MPQUICを用いた通信経路喪失によるパケットロス削減手法(奥西 理貴)

 近年の大容量コンテンツの普及に伴い,複数のインターフェースを同時に利用し,帯域を集約する技術が求められている.特に,モバイル端末においては,LTEや5Gといったセルラや,Wi-Fiといった無線LANでの同時接続が考えられる.MultipathTCP(MPTCP)は複数のインターフェースを用いて通信を行うことができるTCPの拡張であり,帯域集約や接続障害耐性,シームレスなハンドオーバを提供する.一方で,モバイル端末が移動性と5GやWi-Fiの通信範囲や配置間隔を考慮すると,それらでの接続は一時的なものとなり,通信経路の喪失が頻繁に起こることが想定される.しかし,MPTCPは内部的にTCPコネクションを複数利用するものであるため,TCPが持つ本質的な課題から,通信経路の喪失時にパケットロスが生じる可能性がある.本研究では,MPTCPに代わりMultipathQUIC(MPQUIC)を用いることで,ハンドオーバによって通信経路を喪失した際のパケットロスを削減する手法を提案する.

ネットワーク情報システム研究室車両走行環境を考慮したHUDを用いたAR表示による安全と効率の検討(林 聡一郎)

 現在,車のナビゲーションシステムが開発されている.車のナビゲーションシステムには,前方の道路にARを表示するHUDや車にディスプレイを設置するHDD,頭部に装着するHMDが存在する.現在HUDは,航空機だけでなく鉄道車両や自動車等にも使用される1)ようになっている.HUDを車のナビゲーションシステムに使用すると,HUDは道路から目を離す必要がなく,運転パフォーマンスを向上させることができる.