2020年度の卒業論文発表会において,竹内 一真(B4),池田 仁(B4),山本 浩太郎(B4),杉本 涼輔(B4),殿村 茂天(B4),塚﨑 拓真(B4),山村 竜也(B4)の7名が以下のタイトルで発表を行いました.

  1. Pub/subメッセージングモデルによるセンサ情報処理の有効性検証(池田 仁)
  2. 3次元環境認識に基づく死角領域内のAR可視化によるドローン操縦性向上(竹内 一真)
  3. 走行環境を考慮した通信トラフィック制御のための車両情報の送信周期割当手法(山本 浩太郎)
  4. V2X通信における車両走行環境に基づく優先制御方式の検討(杉本 涼輔)
  5. V2V通信を用いた追い越しおよび停車車両の回避支援の有効性の検討(殿村 茂天)
  6. 移動環境におけるOpenFlowを用いた複数ネットワーク併用による通信品質向上(塚﨑 拓真)
  7. 車両位置相互監視に基づくなりすまし検知手法のロジスティック回帰分析による性能向上(山村 竜也)

Pub/subメッセージングモデルによるセンサ情報処理の有効性検証(池田 仁)

 近年,IoT(Internet of Things)や協調型自動運転技術の研究が進められている.IoTは,様々な種類のセンサを介して,取得した情報が直接インターネットを通して利用されている.IoTや協調型自動運転技術の発展とともに,センサから得られる情報量が多くなってきており,センサ情報処理技術の高いスケーラビリティが求められている.またIoTや協調型自動運転では,大量のセンサ情報が,システム・環境の向上,安全性の確保,自動車の制御などに用いられるため,正確に素早くセンサ情報を取得し,様々なシステムで利用可能にする,リアルタイム性のあるセンサ情報処理技術が必要である.協調型自動運転技術には,ミリ波センサ,加速度センサ,GPSセンサなど様々なセンサが使用されており,これらのセンサ情報を処理することで自動運転を制御している.これらのセンサ情報は高速で動的なものであり,センサ情報処理が遅れると事故につながる可能性が高まる.現在多くのシステムで用いられているクライアント/サーバモデルは,スケーラビリティが低く接続機器数の増加によるパフォーマンスの低下という問題点があり,高速で動的なデータのセンサ情報処理に適していない.本稿では,スケーラビリティが高く,動的なネットワーク構成に対応可能なモデルであるPub/subメッセージングモデルをDDS(Data Distribution Service)を用いて実装し,リアルタイム性の重要なセンサ情報処理に対する有効性を検証し,Pub/subメッセージングモデルが大規模で動的な分散リアルタイムシステムのセンサ情報処理に有効であることを示した.

3次元環境認識に基づく死角領域内のAR可視化によるドローン操縦性向上(竹内 一真)

 近年,多方面でのドローンを活用した事業が進出しており,屋内での利用も期待されている.中でも小型ドローンは機体が小さいことから,人間が入れないような狭い環境での活躍が期待されている.しかしながら,狭小空間でのドローンの飛行は障害物が多く,遮られた視点からの操縦は困難な場合がある.オンボードカメラ搭載ドローンを用いれば上記の環境でも操縦しやすくなるが,カメラは前方しか映さないため,死角が多くなるという問題が生じる.そこで本研究では,操縦者とドローンの間に障害物が存在し,ドローンを視認できない環境に対してAR(Augmented Reality)を用いる.SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を用いた3次元環境を事前に作成し,障害物の向こう側を可視化し認識する手法を提案した.しかし,操縦者視点での操縦を実現する上で,障害物までの距離が掴めない懸念がある.そこでARを用いることでドローン近傍の障害物を知覚するための方式を提案し,従来の操縦とARを用いた方式を比較した.その結果,ARありの手法では一貫して走行時間,衝突警告回数が減少し,また,障害物を知覚する手法では衝突警告回数が減少し,操縦性の向上を示すことがわかった.

走行環境を考慮した通信トラフィック制御のための車両情報の送信周期割当手法(山本 浩太郎)

 近年,自動運転の研究開発が活発に行われている.しかし,自動運転の実現に向けて車載センサだけでは限界があり,センサ情報を通信取得する協調型自動運転の研究開発が盛んに行われている.合流調停や車線変更,緊急車両優先走行,信号情報取得など,複数のアプリケーションをそれぞれで実現するには非効率的であり,共通の情報通信プラットフォーム「ダイナミックマップ」が有効である.ダイナミックマップを構築しているクラウドに膨大な車両からのデータが集約されると,ネットワーク負荷増大により処理負荷の集中や通信遅延が問題となるため,通信トラフィックの低減が必要である.また,安全な自動走行にはダイナミックマップのデータの鮮度が重要となるため,ダイナミックマップの効率的な更新が必要である.本研究では,ダイナミックマップのデータを利用して車両情報をダイナミックマップに送信する周期を動的に割り当てることで,通信トラフィックを低減しつつダイナミックマップを効率的に更新する手法を提案する.シミュレーション結果から,提案手法を使用した場合における通信トラフィックの低減とダイナミックマップの効率的更新に対して効果を示した.

V2X通信における車両走行環境に基づく優先制御方式の検討(杉本 涼輔)

 近年,ITS分野にてV2X(Vehicle-to-Everything)通信を利用し,自動車が自車両の位置や速度などの情報を周囲と共有する安全メッセージ(safety message)について多くの研究が行われている.しかし,混雑状況下においてトラフィックが増大すると,この安全メッセージのパケット到達率や通信遅延が劣化する問題がある.中でも安全メッセージにおいてのパケットロスは実質的に100ms以上の通信遅延と同義であり,安全メッセージのパケット到達率が低下すると車両同士の衝突などの危険性が増大する可能性が考えられる.そこで本研究では,各車両が受信した安全メッセージから車両の位置や速度といった車両走行環境を把握し,それに基づき自車両の危険性を推測する.そしてアプリケーション層でその危険性に応じた優先度を安全メッセージに設定,MAC層にてこの優先度を用いたEDCA(Enhanced Distributed ChannelAccess)による優先制御を行う方式について提案,検討する.シミュレーションの結果から提案手法は通信遅延の要件を満たしつつ,パケット到達率の向上に有効であることを示した.また,提案手法のパラメータを調整することで,より危険性が高いと考えられる交差点上に存在する車両,および高速走行中の車両の送信メッセージにおいて,他車両と比較してより高いパケット到達率とより小さい通信遅延時間を確保することができた.

 V2V通信を用いた追い越しおよび停車車両の回避支援の有効性の検討(殿村 茂天)

 近年,自動運転の実用化に向けてV2V(Vehicle-to-Vehicle)通信といった技術の研究がされている.車両同士が通信を行うことで,車両単体のセンシング技術だけでは認知できなかった死角の車を検知できるようになる.そのため,事故が起こる可能性を減らすことができ,安全に走行できるようになる.また,運転支援システムが市場に導入されており,ドライバーは安心して運転できるようになっている.その中には,危険なタスクの一つでもあるとされている追い越しを支援する運転支援システムが存在している.しかしながら,この追い越し支援システムは対向車線の存在を考慮されておらず,使用可能な場所も高速道路のみと限定されている.そこで本研究では,片側1車線の一般道路に着目し,V2V通信を用いて対向車線の車両情報を把握し対向車との距離に応じてドライバーに追い越しの可否を通知する手法を提案し,追い越しや停車車両回避支援の有効性の検討をドライビングシミュレータを使用して行った.結果として,追い越しや停車車両回避の際にドライバーに支援情報を通知することで判断に迷わず,安全に走行できることが示された..

移動環境におけるOpenFlowを用いた複数ネットワーク併用による通信品質向上(塚﨑 拓真)

 近年,携帯回線やWi-Fiなどの無線通信技術の高速化の研究が盛んに行われている.車車間通信などへの発展が期待され,今後さらに効率的なネットワークを構築することが重要である.携帯回線は広域なエリアで高速通信を行うことができる.しかし,近距離間の通信においても基地局を介した通信をすることから,通信遅延が大きくなる問題点がある.また,低帯域になるにつれて,低速,高遅延になるため,改善が必要である.アドホックネットワークの直接通信では,高速で低遅延の通信を行うことができる.しかし,送受信ノード間の距離が大きくなるにつれて,マルチホップ通信が行われるため,低速,高遅延になる問題点がある.本論文では,OpenFlowの技術を用いて,携帯回線とアドホックネットワークを併用する手法を提案する.OpenFlowは制御部と転送部が分離したアーキテクチャを採用しており,柔軟な経路制御を行うことができる.また,モバイルノードの動的情報からスループット,通信遅延時間といった通信品質を考慮し,各ネットワークの利用比率を変更する.移動環境において通信を行う際の通信品質の評価をシミュレーション上で行い,結果として,携帯回線やアドホックネットワークのみを用いた手法より,通信品質が向上したことがわかった.

車両位置相互監視に基づくなりすまし検知手法のロジスティック回帰分析による性能向上(山村 竜也)

 近年,コネクテッドカーと呼ばれる通信できる車両が研究されている.車両は周囲の車両,路側機と通信ができることに加え,携帯回線を用いたクラウドとの通信も可能である.クラウドではそれらのデータを統合することで,動的でリアルタイムなマップを作成し,ドライバに安全運転支援サービスを提供できる.一方で,車載ネットワークや車車間通信へのなりすましが存在する.なお,「なりすまし」とは車両が故意に偽装した不正なデータを送信することである.車両が故意になりすました位置データをクラウドに送信することで,交通渋滞や事故を誘発できるので,不適切なデータがクラウドを用いたサービスに与える影響を考慮し,対策する必要がある.そこで本研究では,なりすましの中でも位置データのなりすましに着目し,検知する手法としてロジスティック回帰分析を用いた手法を提案し,検知率やクラウドでの処理時間の評価をシミュレーション上で行った.結果として,従来の車両位置を相互に監視して検知する場合に比べて検知率や処理時間が向上したことがわかった.