2021年5月15日の第127回月例発表会(B4)において,佐々木 雄大(B4),角田 巧喜(B4),西川 瑳亮(B4),平光 樹(B4),樫原 侑磨(B4),国本 典晟(B4),齊藤 慶一(B4),宮脇 弘充(B4),鈴木 彩門(B4),土居 大輝(B4)の10名が以下のタイトルで発表を行いました.

  1. ブロックチェーンを利用した公衆無線LAN認証方式の提案と実用性の検証(佐々木 雄大)
  2. ライブストリーミングにおける冗長経路伝送を利用した通信品質向上(角田 巧喜)
  3. 車両とビーコンの位置情報の同送によるV2X通信なりすまし検知手法(西川 瑳亮)
  4. VANETにおける車両密度に応じた路側機による動的制御手法(平光 樹)
  5. 分散処理を用いたレンダリングの有効台数の検証(樫原 侑磨)
  6. ネットワークスライスによるホームネットワークの効率化手法(国本 典晟)
  7. ドローン運航管理システムと連携するP2P通信とブロックチェーンを活用した犯罪ドローン対策システムの検討(齊藤 慶一)
  8. コネクテッドカーと通信非対応車両の混在状況における高速道路合流時の効率の検討(宮脇 弘充)
  9. PDRを用いた操作可能ARコンテンツの共有(鈴木 彩門)
  10. クラウドゲームにおける入力遅延の解消のための入力予測と分散処理の利用(土居 大輝)

ブロックチェーンを利用した公衆無線LAN認証方式の提案と実用性の検証(佐々木 雄大)

現在,スマートフォンやタブレット端末の普及が進んでおり,インターネットは私たちの生活において欠かせない存在となっている.そのような中,外出先でも簡単にインターネットを利用することができる公衆無線LANが,カフェや駅などの公共施設に導入されている.また,最近では,東京オリンピック・パラリンピックに向けて,自治体や観光施設が公衆無線LANを積極的に設置し始めている.しかし,これらの公衆無線LANは便利である反面,セキュリティが問題視されることも多い.代表的なものとして,通信の盗聴や覗き見,なりすましアクセスポイントがある.これらの脆弱性の対策として,Radius(Remote Authentication DialIn User Service)による認証システムが導入されることがある.Radius認証では,ユーザからの要求に対してサーバなどが認証を行い、接続の可否を返すというサーバ/クライアントモデルの仕組みをとる.しかし,この認証方式を採用していたとしても,データ改ざんを目的としたサーバ攻撃や,不正アクセスポイントによるアクセスログの改ざんといった問題は考えられる.そこで本研究では,Radius認証の利点に加え,認証情報やアクセスログの改ざんを困難にするために,ブロックチェーンを用いた公衆無線LANの認証方式を提案する.

ライブストリーミングにおける冗長経路伝送を利用した通信品質向上(角田 巧喜)

近年,様々な業界で動画配信や生放送の利用が増えてきている.YouTubeなどの動画配信サイトではアカウントを作れば,誰でも簡単に配信を行うことができ,昨年(2020)からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりアーティストなどのライブやコンサートでも配信を通じての提供が増加している.このことから,ライブストリーミングにおける通信手法はより効率的なものが求められると考えられている.ライブストリーミングをおこなう際に,2つ懸念点が存在する.1つ目は,十分な帯域幅が確保されていない場合のスループットの低下である.スループットが低下したことにより,配信時の遅延と画質の低下につながってしまう.2つ目は,パケットの損失である.パケット損失が多い場合,映像の流動性が低下してしまう.以上,2つの懸念点はライブストリーミングの品質に大きく関わるため解決すべき問題である.そこで本研究では,ライブストリーミングを用いて映像を配信する際に,ルーティングを最適経路だけではなく,冗長経路を利用し,複数の経路を使った通信手法を使うことで通信の効率化を行う.そして,スループットの低下,パケットの損失を抑えることで,ライブストリーミングにおける品質向上を目指す.また,評価方法としては,冗長経路を使用しない最適経路のみで通信を行う際のスループットとパケット損失を比較して評価をする.

車両とビーコンの位置情報の同送によるV2X通信なりすまし検知手法(西川 瑳亮)

近年,ITS(IntelligentTransportSystems)の分野において,自動運転や車車間通信の研究が盛んに行われている.車両は,車車間通信(V2V通信),路車間通信(V2I通信),歩行者の所持する端末との通信(V2P通信),携帯回線を利用したクラウドとの通信(V2C通信)を行うことができる.これらを総じてV2X(VehicleToEverything)通信という.車両がV2X通信を行うことで,クラウドは様々なデータを収集することができ,どの車がどの場所で事故を起こしたなどの車両情報・道路情報の管理から,ガソリン残量やタイヤの空気圧の状況によって警告する運転支援システムといった様々なシステムやサービスを提供することができる.一方で,クラウドを利用したシステムにおいて,クラウドに対する不正なデータ転送がシステムに大きな影響を与える.近年ではクラウドに対する不正なデータの転送やクラッキング行為が増加傾向にあり,クラウドを利用した安全運転支援サービスに対する攻撃も脅威となる.そういった攻撃の一つに車両がクラウドに走行データや位置データを偽装した不正なデータを送信する行為がある.なお,本論文において走行データや位置データを偽装した不正データを送信する行為を「なりすまし」と定義する.本研究では,車両の位置データと道路に設置されたビーコンの位置データを同送することにより、関連研究に対して少ない計算量で車両のなりすましを検知することを目的とする.

VANETにおける車両密度に応じた路側機による動的制御手法(平光 樹)

近年,VANET(Vehicular Adhoc NETwork)の研究が多く進められている.VANETでは,車両同士が車々間通信によってアドホックネットワークを構築する.これにより運転支援,道路交通情報の伝送,ユーザ通信など様々な利用が期待できる.VANETは道路の状態によらずネットワーク網を構築できることも利点の一つと言える.しかし,VANETには車両密度が高くなると通信の効率が低下するという課題がある.高密度な場合,トラフィック量が増大しメッセージフレームの衝突が起こり,ネットワーク内におけるメッセージの送信効率が低下する.また,逆に車両密度が低い場合,頻繁な接続切断や隠れ端末問題といった課題が生まれる.このように密度の影響を受けやすいのがVANETの課題と言える.そこで本研究では,等間隔に設置した路側機とメッセージ伝送の規格であるIEEE802.11eのHCCA(Hybrid coordinationfunction Controlled Channel Access)と呼ばれるアクセス制御方式を用いる手法を提案する.本研究では,1台の路側機が管理する範囲当たりの車両台数を車両密度と定義し,車両密度に応じて路側機の処理を動的に切り替える.車両密度が高い状況下では,HCCAを活用し車両通信を制御することで課題を解決する.対して,車両密度が低い状況下では,路側機を車両情報の入ったメッセージの中継機として用い,低密度時の課題を解決する.この提案手法の有効性をシミュレーションによって評価する.

分散処理を用いたレンダリングの有効台数の検証(樫原 侑磨)

近年,CGアニメーション,映画における映像美の進化が目まぐるしい.その映像美を創造するためにレンダリング(3D空間におけるオブジェクトを画像に描画すること)が行われているが,より良い画像を描画するために時間というコストが指数関数的に掛かるのが現状である.そこで分散処理技術であるクラスタリングを採用することでその負担を減らすことが可能である.基本的にはクラスタリングに加えるノード数を増やすことでコストを減少させられるが,ホストノードから自身以外へ分散する際にネットワークを経由するため,ノード数が増加するに連れて経由時間も増加する.そこで総合的なコストを考慮するために適切なノード数を検証すべきであるが,為されていない.そこで本研究では,ノード数の変化による最適なノードの有効数に関する検証・考察を行う.

ネットワークスライスによるホームネットワークの効率化手法(国本 典晟)

やオンラインゲームの普及により,家庭でオンラインサービスを快適に享受するために求められる通信帯域は増大している.さらに,今後様々なIoT(InternetofThings)デバイスが普及していくにつれて,ホームネットワークに接続されるデバイス数は増大するため,ホームネットワークは複雑化し,通信帯域が逼迫することが予想される.しかし,家庭には大きな通信帯域幅は必ずしも求めることができない.また,専門的な知識のないユーザには多数のデバイスや複雑なネットワークを管理するのは難しいため,効率的なネットワークを構築することはできない.ホームネットワーク用のIoTデバイスやIoT対応家電は年々増加しており,MANOMAなどスマートホームサービスも提供されている.しかし,それらはそのサービスを提供する企業があらかじめIDを割り振ったIoTデバイスにしか対応していないものであり,ユーザは自由にIoTデバイスを選択してネットワークを構成することが困難になっている.そこで,本研究ではホームネットワークを通信の性質ごとに分割し,それぞれの分割したネットワークの性質に応じてプロトコル設定や通信制御を行うことで,ホームネットワークの効率的な帯域利用を目指す.

ドローン運航管理システムと連携するP2P通信とブロックチェーンを活用した犯罪ドローン対策システムの検討(齊藤 慶一)

散布,インフラの点検,災害の対応などさまざまな分野で,無人航空機(ドローン)の利用が急速に進んでいる.現在は深刻な人手不足が懸念される物流業界の構造を抜本的に改革する要素としてもドローンが着目されている.近年,国の機関などがドローンの有人地域における目視外飛行を可能にするための,ドローン運空港管理システムの実証実験や,環境整備が進んでいる.上記の流れから,将来,ドローンが私たち居住区の上空を飛ぶことが常識となっていることが想定される.上記の場合に懸念されることは,ドローンによる犯罪である.現在は,ドローンが上空に飛んでいることを目にすることがほとんどないために,ドローンが目立ってしまい,犯罪を行うには難しい状況であった.しかし,ドローンによる物流サービスやインフラ点検,警備などで,私たちの居住区域を走行することが常識となった場合,ドローンは目立たずドローンによる犯罪を行う敷居も下がってしまうために,犯罪の発生件数が急上昇する恐れがある.また,上記で言及した実証実験で取り組んでいるシステムには,ドローンによる犯罪を考慮したユースケースや機能は存在しておらず,このままでは,特定事業者を対象とした物流を妨害するドローンに対して対策を打つことができない.そこで,本研究ではブロックチェーンのパブリック型プラットフォームに参加しているドローン間でP2P通信を行い,その送受信を取引データとして,ブロックチェーンに記録し,送受信したドローンの識別番号と位置情報を,連携する運航空管理システムの情報と比較することで,犯罪を行う可能性の高いドローンを検知,識別番号からユーザを特定,ブロックチェーン上の取引データから否認を防止することで,ドローンによる犯罪を起こしにくくするシステムを検討する

と通信非対応車両の混在状況における高速道路合流時の効率の検討(宮脇 弘充)

近年,自動運転技術に関する研究が活発に行われ,レベル3自動運転が実用化されている.今後,自動運転車の研究開発が進むに伴い,自動運転車は徐々に普及が進んでいくと考えられる.さらに,V2X(Vehicle-to-everything)通信を利用して,車載センサの死角や周辺車両の情報を得られるコネクテッドカーがある.コネクテッドカーと自動運転技術を併用することにより,現在に比べ効率的な交通になることが期待されている.しかしながら,コネクテッドカーが実用化されたとしても,市場への普及が進むまでには時間がかかり,通信に対応していない車両(通信非対応車両)とコネクテッドカーが混在する状況が生じると予想される.このような状況においてコネクテッドカーは,コネクテッドカー自身の情報だけでなく,通信非対応車両の情報も他のコネクテッドカーと共有する必要がある.そこで本研究では,コネクテッドカーと通信非対応車両が混在する高速道路の合流部において,合流車線を走行するコネクテッドカーが本線に合流する手法を提案し,シミュレーションによって効率を検討する.

PDRを用いた操作可能ARコンテンツの共有(鈴木 彩門)

ARは,1990年代に始まって以降,長く実用化には至っていなかったが,近年では,PokémonGOなどのアプリやデバイスの登場により,一般に認知されるようになっていった.現在では大手企業も参画する大きな市場となっている.そのような風潮の中,ARクラウドという考え方が生まれた.ARクラウドは,以下のような要素を持つ技術の総称である.
• 永続的で一貫したポイントクラウド
• 瞬時に複数のデバイスの位置を把握可能
• 仮想オブジェクトを配置してインタラクション可能
ARクラウドが発展することで,従来のARではなしえなかった体験をユーザに提供できるようになる.しかし,ポイントクラウドを作成するには膨大な処理量が必要とされ,ポイントクラウド自体の情報量も膨大である.これが,ARクラウドの普及を遅らせている一つの要因となっている.そこで本研究では,PDRを用いて,複数ユーザがスマートフォンなどの端末で仮想空間のオブジェクトを操作,変更した内容を,リアルタイムで各端末に適切な位置・向きで表示する簡易的な手法を提案する.PDRを用いることで,ポイントクラウドによるマップを用意する必要のない,処理速度の速い手法を実現することを目指す.

クラウドゲームにおける入力遅延の解消のための入力予測と分散処理の利用(土居 大輝)

現在,ゲーム産業ではクラウドゲームが注目されている.クラウドゲームとはクライアント側の処理が必要最低限に抑えられており,ゲーム内の演算処理やレンダリングなどは全てサーバで行う.これにより,ハードウェアの互換性を考える必要がなくなり,バグへの対応やバージョンのアップデートなども容易になる.しかし,クラウドゲームではネットワークを経由して処理を行うためネットワーク遅延の影響を受けやすい.その中でも入力遅延は,ユーザ体験のリアルタイム性において非常に重要な問題となっている.ユーザが入力して画面に反映されるまでの時間が60ms程度から遅延を感じ始め,100msを超すと不快になると言われている.遅延の軽減を目的とした先行研究に,ユーザの入力傾向を学習することによって直近の入力から未来を予測するという手法がある.この手法では突発的なユーザの入力に対しては,起こりうる全状態を描画して事前に送信している.全状態を描画して送信するのは通信状況や状態数によっては大幅な遅延に繋がりかねない.そこで本研究では,ユーザの入力の予測を一つに絞るのではなく,分散コンピューティングでその求めた割合に応じて計算するコンピュータの台数を変化させて確率の低い入力に対しても対応できるようにする.