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第179回月例発表会(M1)

2026-07-13

こんにちは,広報の坂田(B4)です.

2026年7月13日の第179回月例発表会(M1)において,佐野 嵩斗, 小林 孝広, 角田 直仁, 小野 敬生, 小野 真如, 馬渕 皓輝, 平井 佑樹, 光久 祥矢, 末澤 智崇の9名が以下のタイトルで発表を行いました.

車載・路側協調情報の選択的融合による歩行者横断意図推定手法の検討 (佐野 嵩斗)

20260713 SSano

交通環境における歩行者の安全性を向上させるためには,車両が周囲の歩行者の行動を早期に把握することが重要である.特に交差点や横断歩道付近では,歩行者が近い将来横断するかどうかを推定する歩行者横断意図推定が,自動運転や運転支援における安全判断に有用である.既存研究では,車両に搭載された車載センサから得られるカメラ画像,歩行者軌跡,車両速度,周辺環境情報などを用いた横断意図推定が行われている.しかし,車載センサのみでは,遮蔽や視野制限により,横断意図を推定する対象歩行者の周辺状況や交差点全体の交通状況を十分に把握できない場合がある.一方,交差点周辺に設置された路側センサは,交差点を俯瞰的に観測できるため,車載側の観測情報を補完する情報源として有効であると考えられる.ただし,路側センサで観測されるすべての車両・自転車・歩行者などの交通参加者情報が,対象歩行者の横断意図推定に有効であるとは限らない.また,路側で観測された情報を車両側で利用する場合,すべての路側観測情報を融合すると,入力情報量や処理対象となる交通参加者数が増加す
るだけでなく,対象歩行者と関係の薄い情報が推定に影響する可能性がある.
そこで本研究では,車載側で観測された情報に加え,路側で観測された周辺交通参加者情報と道路構造情報を用いて,将来一定時間以内の横断開始を予測する手法を検討する.特に,対象歩行者との関係や横断歩道・車線などの道路構造との関係に基づいて,横断意図推定に有効な周辺交通参加者情報を選択して融合する.これにより,路側で観測された周辺交通参加者情報を用いない場合よりも推定性能を向上させること,およびすべての周辺交通参加者情報を用いる場合と比べて少ない入力情報量で同等程度の推定性能を得ることを目指す.

FDA-AFDM による高速移動車両向け ISAC (小林 孝広)

20260713 TKobayashi

自動運転車両は,歩行者や他車両との衝突を避け安全に走行するために,周囲の物体を検知する機能を備える.しかし単独の車載センサだけでは,死角や悪天候により検知できない範囲が生じるため,他の車両や道路側の設備と情報を交換する通信機能もあわせて必要となる.この検知と通信を1つの電波で同時に行う技術がISAC(IntegratedSensing and Communication) である.通信とセンシングで電波や装置を共用できるため,それぞれを別々に用意する場合に比べて無線資源を効率的に利用できる.ISACでは,データを載せて送信した電波が物体に当たって跳ね返る反射波を分析することで,通信を行いながら物体の距離・速度・角度を推定する.
車両向けISACの課題は,高速移動に伴うドップラーシフトが通信性能を劣化させることである.ドップラーシフトとは,動く物体に反射した電波の周波数が相対速度に応じて変化する現象である.広く使われるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing) は,周波数の異なる多数の波にデータを分けて同時に送る方式であるが,ドップラーシフトで周波数がずれると波同士が干渉し,通信性能が劣化する.本研究では,高速移動に強い波形であるAFDM(Affine Frequency Division Multiplexing) と,簡易な構成で角度を推定できるアンテナ技術であるFDA(Frequency Diverse
Array) を組み合わせたFDA-AFDMISAC方式を提案する.

E2E 協調自動運転における走行計画損失に基づく通信領域選択の補正(角田 直仁)

20260713 NKadota

自動運転車は,カメラや LiDAR などの車載センサから周辺環境を認識し,その情報に基づいて将来の走行経路や車両制御を決定する.しかし,交差点や駐車車両付近では,建物や大型車両による遮蔽が発生し,自車のセンサだけでは歩行者や二輪車などを認識できない場合がある.この問題に対し,V2X 通信を用いた協調認識では,他車両や路側機が取得したセンサ情報または中間特徴量を共有することで,自車から見えない領域を補完する.一方,周辺エージェントが持つ情報をすべて共有すると,通信量や通信遅延が増大する.そのため,限られた通信資源の中で,自車の走行に必要な情報のみを選択して通信することが求められる.本研究では,協調エージェントから受信した特徴量を自車の特徴量と融合し,その融合特徴から将来のウェイポイントを生成して車両制御へつなげる,End-to-End(E2E)協調自動運転を対象とする.E2E 協調自動運転では,通信情報の価値は物体を正しく認識できるかだけでなく,最終的な将来軌道の生成や安全な走行判断にどの程度寄与するかによって決まる.そこで本研究では,限られた通信量の下で,認識上重要な領域ではなく,走行計画にとって有用な通信領域を優先することを目指す.

V2V 認証高速化のための走行経路に応じた V2N 経由証明書連携手法(小野 敬生)

20260713 TOno

V2X(Vehicle-to-Everything)では,車両やインフラ設備が通信により周辺状況を共有することで,車両単体のセンサでは把握しにくい情報を補完する.その中でも V2V(Vehicle-to-Vehicle)通信では,車両が CAM(Cooperative
Awareness Message)を周期的に送信し,周囲車両は受信した CAM から送信元車両の位置や速度などを把握する.CAM に含まれる情報は車両の状況認識に用いられるため,なりすましや改ざんされた CAM を受理すると,周囲状況を誤って認識する可能性がある.そのため,CAM のような V2X メッセージでは,送信元認証と改ざん検知のために,デジタル署名と証明書を用いる PKI に基づくセキュリティ方式が想定されている.この方式では署名検証に送信元車両の証明書が必要となるが,証明書を常に CAM へ添付すると通信負荷が増加するため,ETSI の仕様書では証明書を一定間隔で CAM に添付する方式が示されている.しかし,初回 CAM 受信時に送信元車両の証明書を保持していなければ,その CAM を検証できず,危険の認知が遅れた結果,事故リスクが増加する可能性がある.また,証明書を CAM に添付する以上,V2V 無線チャネルの負荷も残る.
そこで本研究では,CAM を受信する前に,今後必要になる証明書を事前取得する方式を検討する.車両の現在位置,速度,予定走行経路から将来接近する車両を予測し,初回 CAM 受信時点で送信元車両の証明書を保持しておくことを目的とする.

協調ゲームにおける発話と行動の不一致検出に基づく役割分担修復手法の提案(小野 真如)

20260713 MOno

人間と AI が共通の目標に向けて作業する場合,担当する作業や今後の行動予定を伝え合うことで,円滑な役割分担が可能になる.人間と AI の協調においても,自然言語を用いて役割や行動計画を共有する手法が提案されている.一方,作業状況の変化,操作の失敗または計画の変更により,一度伝えられた役割と実際の行動が一致しなくなる場合がある.例えば,パートナーが「皿と配膳を担当する」と伝えた後に食材運搬を開始した場合,AI が発話を信頼し続けると,作業の重複や停滞が発生する可能性がある.反対に,一時的な迂回や遅延を役割変更と誤認すると,不要な役割変更や通信が発生する.
そこで本研究では,パートナーが伝えた役割意図と,その後に観測された行動との不一致を検出し,必要に応じて役割分担を修復する手法を提案する.ここで,食材運搬,皿の取得,配膳などの作業の種類を役割,不一致後に AI の役割変更,確認または役割の再提案を行うことを役割分担修復と呼ぶ.評価には,料理作業を模した 2 者協調ゲーム環境である Overcooked-AI を用いる.発話後に計画を変更するパートナーや,一時的に行動が遅延するパートナーとの協調を通じて,チーム成果と役割分担の回復性能を評価する.

NR-V2X のブロードキャスト・ユニキャストを CAM・DENM に適用する手法の検討(馬渕 皓輝)

20260713 KMabuchi

自動運転技術に関する研究では,V2X(Vehicle-to-Everything) 通信を利用し,車両情報を含む道路上の動的データを共有し,他の車両などの存在を考慮したより安全な手法が検討されている.V2X 通信とは,車車間通信
の V2V(Vehicle-to-Vehicle) 通信,車両-インフラ間通信のV2I(Vehicle-to-Infrastructure) 通信,車両-歩行者間通信のV2P(Vehicle-to-Pedestrian) 通信,車両-ネットワーク間通信の V2N(Vehicle-to-Network) 通信の総称である.V2X 通信に用いる通信技術として DSRC(Dedicated Short Range Communication),LTE(Long Term Evolution),5G などが挙げられるが,その中でも 5G を利用する手法は NR-V2X と呼ばれ,V2V 通信において,ブロードキャストだけでなくユニキャストが可能である.また,V2X 通信で送受信されるメッセージの種類として,CAMとDENMがある.CAM は位置,速度,加速度,車両 ID といった基本的な情報,DENM は交通事故,道路工事といったイベント情報である.CAM は全ての車両に共有する必要は必ずしもないが,DENM は緊急時などの情報であるため,通信範囲内の全ての車両に共有する必要がある.
そこで本研究では,送りたいメッセージが CAM かDENM かに応じてブロードキャスト・ユニキャストを使い分けることで効率的な通信が可能になるのではないかと考え,シミュレーション実験により通信遅延削減とパケット到達率向上に対する効果を検討する.

複数ジャンルのゲームを対象としたゲーム AI における人間らしさの客観的評価手法の提案(平井 佑樹)

20260713 YHirai

近年,計算資源の向上と深層学習をはじめとするアルゴリズムの発展に伴い,ゲーム分野における人工知能(AI:Artificial Intelligence)の活用が広がっている.人工知能研究では,機械が人間のような知的振る舞いを示せるかが長年議論されており,その代表例としてチューリングテストが知られている.一方で近年は,盤面ゲームや対戦型ゲームにおいてトップクラスの人間を凌駕する水準に到達した AI も報告されている.しかしゲームにおいて重要なのは勝敗のみではなく,対戦・協力相手としての自然さや学習支援などの体験価値である場合がある.そのため,AI を単に強くするのではなく,迷い・揺らぎ・試行錯誤やリカバリといった効率的だけではない人間の振る舞いへ意図的に近づける人間らしいゲーム AI が求められている.人間らしいゲーム AI の開発には,AI がどの程度人間らしいかを評価し設計に反映する工程が不可欠であるが,従来の評価は主観的で変動しやすく,コストも高い.
そこで本研究では,人間らしさを「人間プレイヤーが示す効率的だけではない振る舞いパターンがどの程度表れているか」
を表す性質と定義し,行動ログに基づいてゲーム AI の人間らしさの程度を定量化する手法を提案する.これまでに,基礎検証として迷路ゲームを対象に,人間プレイヤーと AI の行動ログから人間らしさを定量化し,主観評価との関係を確認した.しかし,迷路ゲームは移動・探索が中心であり,攻撃,回避,被弾,距離管理などを含むゲームでは,行動の意味や取得可能なログが異なる.本研究では,ゲームごとの行動特性に応じて特徴量を設計しつつ,人間プレイ分布との近さに基づいて人間らしさを評価する枠組みを,複数ジャンルのゲームへ拡張することを目指す.

路側機情報の通信遅延を考慮した安全マージン設定による協調型自動運転のEnd-to-End プランニングの検討(光久 祥矢)

20260713 SMitsuhisa

自動運転車が車載センサのみに依存する場合,建物や大型車によるオクルージョンなどにより,周囲の物体を認識できない領域が生じる.そこで,V2X 通信によって路側機の観測情報を車両へ共有する協調型自動運転の研究が行われている.また近年では,認識・予測・プランニングを単一のネットワークとして最適化する End-to-End(以降,E2E)自動運転が研究されており,車両と路側機の協調をE2E で実現した代表的なフレームワークとして UniV2X がある.一方,V2X 通信には遅延が伴うため,路側機から受信する情報は自車の観測時刻より過去のものとなる.本研究では,この時間差を遅延時間 τ と定義する.ここで,自車セ
ンサの情報は遅延がなく現在の状況を反映しているのに対し,路側機の情報は τ の間に対象が移動しているため位置の誤差を含む.特に,自車から見えず路側機のみが観測している物体は,自車センサによって位置を確認できないため,遅延した情報に依存せざるを得ない.UniV2X は,路側機側の特徴量から物体の速度ベクトルを予測し,これに τ を乗じて特徴量を現在時刻の位置へ移動させることで遅延を補償する.しかし,この操作は対象が等速で運動するという仮定に基づくため,加減速や進路変更を伴う車両では補償後にも誤差が残る.また,補償後の特徴量は情報の古さを考慮せずにプランニングへ用いられるため,プランナは遅延のない自車の情報と,誤差を含む路側機の情報とを同じ確信度で扱うことになる.
本研究では,自車から見えず路側機のみが観測している物体に対し,遅延 τ に応じた安全マージンを設定する.これにより,遅延が大きい場合ほど保守的な軌道を E2E プランナに学習させ,プランニングの安全性向上を目指す.

モバイル環境における QUIC を用いた地理的負荷分散方式(末澤 智崇)

20260713 SSuezawa

近年,自動運転の安全性および交通の円滑性を高めるため,周辺車両や路側設備から得られる情報を活用する協調型自動運転が注目されている.協調型自動運転では,各車両や路側センサが取得した周辺車両の位置・速度,道路状況および交通情報を,地理的に分散配置されたエッジサーバへ送信する.各エッジサーバ上では,ダイナミックマップサービスが担当地域の情報を統合して管理し,車両の走行位置に応じた周辺情報を提供することで,安全かつ円滑な走行を支援する.しかし,各エッジサーバの計算資源には限りがあり,特定のエリアに車両が集中すると,そのエリア内の複数のサーバに負荷が集中し,同一エリア内のサーバだけでは十分に負荷を分散できない可能性がある.このような負荷集中に対応するため,ダイナミックマップサービスがコンテナとして提供される環境では,車両の走行位置と各サーバの負荷を考慮し,サービスコンテナを近隣エリアのエッジサーバへ移行することが有効であると考えられる.一方,2021 年に標準化されたトランスポートプロトコルQUIC は,コネクションを IP アドレスやポート番号ではなく Connection ID(CID)によって識別する.これにより,クライアントの IP アドレス等が変化した場合でも通信を継続できるコネクションマイグレーションという機能を実現した.また,CID はロードバランサがコネクションや転送先サーバを識別するためにも利用できるため,車両の移動やエッジサーバ間の負荷分散を伴う環境への応用が考えられる.
そこで本研究では,協調型自動運転環境における特定のエッジサーバへの負荷集中を軽減することを目的として,QUIC の CID を用いて,ダイナミックマップサービスを実行するコンテナの移行先を決定する負荷分散方式を提案する.

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